2011 Fiscal Year Annual Research Report
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21740004
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鈴木 正俊 東京大学, 大学院・数理科学研究科, 特任助教 (30534052)
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Keywords | 代数学 / ゼータ関数 |
Research Abstract |
本研究の主旨の一つは,ゼータ関数の解析接続をゼータ積分の境界項を通して研究することであった.このゼータ積分の境界項の漸近挙動に対する22,23年度の研究から,ある種のモデル空間の理論が,ゼータ関数の解析接続を研究するのに有効であるばかりか,本研究のもう一つ趣旨であるゼータ関数の零点の挙動を研究するのにも有効であることが分かってきた.モデル空間とは,ある半群の作用で不変な関数空間の一種であり,特に再生核ヒルベルト空間であるという著しい性質をもつ.我々は23年度の研究で,完備化されたゼータ関数の平行移動を用いて生成される,あるモデル空間の族を扱った.これらのモデル空間たちは,要素が全て複素平面上で有理型であるという更に良い性質を持っている.我々はこのモデル空間を研究するのには,ゼータ関数の比を用いて定義される,ある重み付き級数(の族)を積分核とするハンケル型の積分変換(の族)を用いるのが有効であることを明らかにした.例えば,我々は,この積分変換の族から具体的に定まる偏微分作用素の標準系の性質が,モデル空間のスペクトルの性質を記述することを,ある妥当な条件の下で証明した.ここで,我々の扱うモデル空間のスペクトルは,それを生成するのに用いられたゼータ関数の零点の挙動を直接反映している事を注意しておく. 他方,我々はゼータ関数の一般リーマン予想と,上記の(積分変換の核として扱われる)重み付き級数の平均的な漸近挙動がある種の単調性を持つ事,が同値であるという結果も得た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的にそったテーマについては順調に成果が得られているため。特に本研究の研究対象の一つであった高階ゼータ関数、極大放物部分群に付随するゼータ関数については,その零点分布の挙動の幾何学的な背景の大きな部分が既に明らかになっているため。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実績の概要の項で述べたモデル空間とゼータ関数の関係は、本研究課題を推進する中で新たに浮かび上がって来たテーマの一つである。既に述べたように、これはこの課題を研究対象の一つであるゼータ積分の境界項の研究から派生した。当初はこの境界項の性質を関数体類似などを通して明らかにする予定だったが、今後は境界項をモデル空間の理論を通して研究する事を優先する。これはモデル空間の理論が、この課題の解析接続と零点という2大テーマに対して、共通の基盤を提供すると期待されるからである。同様の理由により、高階ゼータ関数等の零点の固有値解釈についても、モデル空間の理論を通して研究を推進してゆく.
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