2009 Fiscal Year Annual Research Report
ダブルアフィンヘッケ環の表現論とその可積分系への応用
Project/Area Number |
21740005
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
笠谷 昌弘 The University of Tokyo, 大学院・数理科学研究科, 特任助教 (40527884)
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Keywords | アフィンヘッケ環 / qKZ方程式 / Koornwinder多項式 |
Research Abstract |
qKZ方程式とは、量子群の表現のテンソル積上に働くR行列を用いて定義されるq差分方程式系である。一方、ダブルアフィンヘッケ環とは、アフィンヘッケ環をその部分代数として2つ含む結合代数である。 本研究において、境界条件を表すK行列を導入し、境界条件付きのqKZ方程式をR行列とK行列を用いて定式化した。また、C^∨C型ダブルアフィンヘッケ環の多項式表現を用いて、境界条件付きqKZ方程式の多項式解を構成する手続きを得た。Dunkl-Cherednik型作用素やDemazure-Lusztig型作用素の積に関する固有値問題を導入し、この固有値問題の解から方程式の解を構成することができる。非対称Koornwinder多項式を用いて、境界付きqKZ方程式の多項式解の具体例をいくつか構成した。(この部分は茂地圭一氏との共同研究) この結果の意義は以下のとおりである、まず、Frenkel-Reshetikhinにより導入されたqKZ方程式は、境界条件がない方程式系であった。笠谷(本研究代表者)と竹山により、この方程式の多項式解を、A型のダブルアフィンヘッケ環の多項式表現を用いて構成する手法が得られていた。さらに、非対称Macdonald多項式を用いて具体的に解を構成することにも成功していた。また最近、Stokmanにより笠谷-竹山の結果を任意のreducedルート系に拡張する結果が得られていた。本研究は、その結果をnon-reducedな場合に拡張することに成功したものである。C^∨C型はダブルアフィンヘッケ環の枠組みの中では最もパラメータが多い場合であり、この結果は非常に一般的な枠組みを表すと考えられる。また、境界における部分的な反射を表すK行列の導入に成功しており、非常に具体的な解の例をいくつか与えている点にも意義があると考えられる。 また、本研究において、A型qKZ方程式のある特別な多項式解は、解に含まれるパラメータの極限をとることで、よく知られたシューア関数と関係するという現象が見つかっている。この現象が成り立つ条件を定式化するために、コンピュータを用いながら具体的な多項式解の構成と極限操作等について計算を続けている。
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