2009 Fiscal Year Annual Research Report
アーベル多様体のモジュライ空間の階層構造及び葉層構造の研究
Project/Area Number |
21740006
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
原下 秀士 Kobe University, 理学研究科, 助教 (70396852)
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Keywords | 代数幾何学 / 数論幾何学 / アーベル多様体 / モジュライ空間 / 階層構造 / 葉層構造 / p-加除群 / 有限群スキーム |
Research Abstract |
主偏極アーベル多様体のモジュライ空間は、代数幾何学や整数論において、大きな成果をもたらしてきた最も重要な空間の一つである。この空間の研究は長い歴史があるにも関わらず、多くの未解決問題が残されており、更なる研究が期待されている。 私はその空間を特に正標数の体上で調べてきた。Oortらの先行結果により、このモジュライ空間には自然な階層構造 : Ekedahl-Oort階層とNewton polygon階層が入ることが分かっていた。私の主な研究対象はこの2つの階層構造の関係(つまり交叉について)である。何時交わるのか、交わりはどのようになるのかを調べている。昨年までの主な結果の一つは、各Ekedahl-Oort階層の(任意の)一般元のNewton polygonの決定であった(来年度、出版予定)。これがOortのある予想と同値であることを示した論文は本年度に出版された。 本年度の成果は、その結果の偏極無し版の定式化、及びその証明である。詳しく述べると、p-可除群に対し、そのp-核のタイプから、そのNewton polygonを評価(最良の評価)する純組み合わせ論的アルゴリズムを与えることが出来た。偏極が無い時は、主偏極アーベル多様体のモジュライ空間のような良いモジュライ空間が無いことが一つの障害であったが、VasiuのT_m-actionのアイデアを用い、BT_1-群やp-可除群の族を上手く扱うことで解決することができた。これは研究実施計画の最初の項目として挙げていた課題であった。 Central leavesの境界やisogeny leavesの明示的な表示等のその他の課題に関して、いろいろな実験的な計算も行った。しかし、出来ているのは未だ比較的取り扱い易い部分だけであり、その他の場合の計算は複雑さが増し、統一的な現象を未だ捉えきれていない。 来年度の主な課題として引き続き取り組む予定である。
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