Research Abstract |
トーリック環およびトーリックイデアルは,可換環論のみならず,整数計画問題分割表の検定(統計学),符号理論など,幅広い応用が知られており,国内外の研究者によって盛んに研究されている。当該研究では,トーリック環の生成系をなす単項式集合の組合せ論的な変形,あるいは,生成系に対応する整数ベクトル集合の凸閉包に対する幾何的な変形によるトーリック環およびトーリックイデアルの環論的性質の変化について研究し,これらにまつわる様々な予想の解決を目指している。当該年度の研究では引き続き,配置の変形操作として,多面体の積などの基本的な操作の一般化である「ネストされた配置」を考え,トーリック環の正規性,トーリックイデアルの生成系,グレブナー基底の構造について解析を行った。特に,もとの配置のグレブナー基底を用いた,ネストされた配置のグレブナー基底の効果的な構成法を発明した。これは,次数2の場合に限定したAoki-Hibi-Takemura-Ohsugiの結果を,一般の次数に拡張したものであり,さらには,もとのイニシャルイデアルたちがスクエアフリーならば,構成されるイニシャルイデアルもスクエアフリーであるという意味で,画期的な改善に成功している。なお,この結果は生成系についても同様である。また,応用例として,3×3輸送多面体の研究に関連し,3次のバーコフ多面体の膨らましに付随する配置をネストされた配置として解釈し,上記の結果を得た際の議論と同様の議論を行うことによって,2倍以上に膨らませると対応するトーリックイデアルに対して,2次のグレブナー基底が存在することを証明した。
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