Research Abstract |
非コンパクト空間上の幾何解析から生じる力学系の平均次元の研究として,ブロディ曲線(複素平面から複素射影空間への正則リプシッツ写像)のなす系の平均次元の研究を行い,松尾信一郎氏との共著論文をまとめた.論文では,正則曲線のエネルギー密度と平均次元との関係を論じ,特に,予想をはるかに超える素晴らしい結果として,ターゲットがリーマン球面の場合に平均次元をエネルギー密度で表す厳密公式を発見した.平均次元の非自明な計算として,世界初の研究成果であると自負している.次に,平均次元の一般論に関する研究について述べる.ヘブライ大学のエロン・リンデンシュトラウスとの共同研究として,力学系を閉区間上の無限シフトの空間に埋め込む問題と平均次元との関係を研究し,共著論文としてまとめた.この問題は平均次元の理論が始まった当初からあった問題だが,我々はある種のグラフ(トライオッドグラフ)の無限直積の空間のなかに適切なミニマルシステムを取ることで,平均次元の値と埋め込み可能性との関連で,これまで知られていなかった興味深い例を構成した.我々の予想が正しければ,この例は埋め込み可能性と平均次元の評価との関係で,ちょうど閾値の部分に対応するものになっているはずである.したがって,将来,我々の予想が肯定的に証明されれば,この論文は理論の基礎となる極めて基本的な論文として評価されると期待できる.また,浅岡正幸氏,深谷友宏氏,三井健太郎氏との共同研究として,バーテルソン・グロモフの提案した力学モース不等式に関する研究を行った.ある種の一次元格子模型の臨界点の増大度の研究である.(実)代数幾何を用いて,正常な増大度を持つものが稠密に存在することを示し,また一方で,ホモクリニックタンジェンシーを応用して,非常に激しい増大度を持つ例を多数構成することに成功した.(論文執筆中.)
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