Research Abstract |
本研究の目的は,空間内の曲面の大域的性質を調べる方法として,ガウス写像の像の様相と曲面の形状との関係を解明し,その応用を与えることであった,今年度は昨年度と同様に,ガウス写像の視点から,特異点を許容する曲面の大域的性質を調べることで以下に述べる結果を得ることができた.3次元双曲型空間内の平坦曲面のクラスは,波面と呼ばれる特異点を許容したクラスで考えると沢山の非自明な具体例が存在する,そのクラスの大域的性質を調べる上でこれまで双曲的ガウス写像の性質について調べてきたが,このクラスのベルンシュタイン型定理にあたる「特異点を持たない完備曲面場合はホロ球面と双曲型円柱に限る」といった,ガウス写像の値分布論的性質の応用として示されるべき幾つかの定理をこの視点では証明することができなかった.そこで研究代表者は九州大学大学院数理学研究院の中條大介博士研究員との共同研究で,平坦波面にワイエルシュトラス型表現公式を与えたときに生じる標準形式の比が有理型関数になることに着目し,弱完備性を仮定した場合のこの関数の除外値数の最良の上限を与えることができた.またこの結果を応用することで,先ほど述べたベルンシュタイン型の定理の別証明を与えることができた.この結果は値分布論の立場からも非常に重要な結果となった,なぜなら,これまでガウス写像の除外値数の最良の上限の評価は,極小曲面で知られているように"4"であることが常識であったが,この関数においてはより小さい"3"で評価できたからである.そこで研究代表者は,その関数について,除外値数の精密化に当たる「完全分岐値数(欠除指数)」の評価について調べ,同じく"3"で評価できることを示した.また,その結果の応用として,像の空間で考える,関数の像の(アールフォースの意味での)島の数について結果を得ることができた.この結果により,値分布論で有名なアールフォルスの5島定理といった島の数についての定理の幾何学的背景を明らかにすることができた.以上の結果は学術雑誌にまとめ,現在専門誌に投稿中である.また,この結果が評価され,幾つかの国内外の研究集会の招待講演を受けることができた.
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