Research Abstract |
本年度はランダム環境中の分枝ブラウン運動の長時間挙動に関する研究を行った.研究の目的で挙げたもののうち,絶滅を伴う分枝ブラウン運動の局在化については,永幡幸生氏(大阪大学)と吉田伸生氏(京都大学)との共同研究で取り組み,弱い意味での局在化を示すことができた.また,この研究成果を研究集会"Topics on random media"で報告した. 粒子数の増大度および自由エネルギーの存在については,離散時刻モデルであるランダム環境中の分枝ランダムウォークで用いられた手法を本モデルに適用することに取り組んだが,時間の連続性が思いのほか問題を困難にしており,まとまった結果を得ることはできなかった.なお,研究目的で挙げた三つの項目すべてに関るものとして,ランダム環境中の分枝ブラウン運動について,ラプラス作用素に定数を加えたものがある種の生成作用素であることが分かった.この結果により,本モデルで自然に現れるマルチンゲールへの理解を深めることができた. 以上で挙げた内容に関連して,ランダム環境中の分枝ブラウン運動の長時間挙動に関する研究成果を国内外で発表した.特に,中国・北京で行われた国際研究集会"The Third International Conference on Stochastic Analysis and its Applications"では,多数の人たちから有益な助言を頂いた.またその際に,以前に分枝マルコフ過程の極限定理に関する共同研究を行ったZhen-Qing Chen氏(University of Washington)と,同内容で研究成果を出しているJanos Englander氏(University of Colorado)も参加しており,議論までには至らなかったが,研究の動向について情報交換をすることができた. 本研究費を用いて,研究集会への参加と講演を行い,また研究随行に必要な専門書を購入し,論文作成用ノートパソコンを購入した.さらに,田原喜宏氏(当時は東北大学,現在は長岡工業高等専門学校)を岡山大学にお招きし,岡山大学解析・確率論セミナーで,非局所型作用素に関するスペクトル半径のL^p独立性について発表頂いた.
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