2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21740072
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
久保 雅義 京都大学, 情報学研究科, 講師 (10273616)
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Keywords | 情報理論 / 数学解析 / 確率微分方程式 / 数理モデル / 逆問題 / Hodgkin-Huxley方程式 / 数値計算 |
Research Abstract |
現代の医学・工学などの分野では,自然現象を記述する偏微分方程式が様々な方法で利用されている.偏微分方程式については,応用的な面だけでなく,純粋な数学の分野としても微分方程式の解の存在や一意性,与えられたデータに対する連続性等の順問題に対する詳細な解析がなされている.一方で応用科学として多くの分野と関連して現れる逆問題の解の構成に対する数学的研究は体系的には進んでおらず,様々な問題点が指摘されている. 本研究課題では,そのような問題点の一つとしてノイズが混入した状況下での逆問題の数学的取扱いについて考察した.数理モデルとしての微分方程式の解の一部の情報からその方程式の係数を決定するという逆問題の解の一意性、安定性などの基本的な適切性がノイズの影響下ではどのような枠組で成り立つのかを解析することは単に数学的重要性だけでなく、非破壊検査や断層撮影法等に現れる逆問題を適切に離散化し精度よく数値計算を行うために必要となっている.工学や医学など多くの分野と関連して現れる確率微分方程式で記述される入出力システムにおいて解に相当する出力データの観測から入力信号を推定するという逆問題を取り上げ,この逆問題の解析手法の確立するための数理モデルを構築し解析を行った.具体的には,確率微分方程式の逆問題を,無限次元パラメータ推定の問題として定式化した.最近の研究成果により,未知入力をパラメータとすると,適切な仮定の下で確率微分方程式の解はパス空間上に統計モデルと呼ばれる確率分布族を定めることは示されている.無限次元版のパラメトリック推定理論として,Cramer-Raoの不等式とFisher情報量の無限次元拡張が,新しく定式化した枠組みの中で成立することを示した.無限次元統計モデルである確率微分方程式の無限次元パラメータ推定問題に適用することを踏まえて具体的な最尤推定量の構成を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では実施計画どおりに応用科学(特に医学・工学)に現れる問題を確率微分方程式でモデル化し,数学解析,情報理論および数値計算を用いて確率的挙動が与える影響について解析を行った.新たに設定した数理モデルにおいても無限次元版のパラメトリック推定理論として,Cramer-Raoの不等式とFisher情報量の無限次元拡張が,新しく定式化した枠組みの中で成立することを示し順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
無限次元統計モデルである確率微分方程式の無限次元パラメータ推定問題に適用することを踏まえて具体的な最尤推定量の構成を行ったが,今後の推進方策として,医学・工学への応用を念頭においた実際の確率微分方程式の逆問題の数値解法のために最尤推定量を数値的に計算するための近似アルゴリズムを構築する予定である.また,波動方程式やシュレーディンガー方程式の逆問題研究のために,無限次元空間上でのFourier-Wiener変換の拡張を考察する予定である.
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