Research Abstract |
本年は,ある確率微分方程式に従うジャンプ型の拡散過程について,[I]有限頻度型ジャンプを持つ場合の飛躍項に関わるパラメータの推定問題,及び,[II]無限頻度型ジャンプを持つ場合の閾値推定法に関わるジャンプ判別フィルタの構成,の2点に関して研究を進めた. [I]では,ジャンプ項の係数が既知の状況の下で,レヴィ測度汎関数に対するセミパラメトリック推定量を具体的に構成した.推定法は「閾値推定法」に依っている.そのアイデアは連続時間観測に基づく自然な漸近有効推定量を,飛躍判別フィルタを用いて自然に離散化することであり,極めて自然な形の推定量である.理論的には適当な観測スキームの下での漸近有効性が示された.この推定量の利点は,レヴィ密度にパラメトリックな構造を仮定せずにその汎関数が推定可能なことであり,また,その漸近的性質の良さと計算の容易さが挙げられる. 研究計画では,ジャンプ項の係数に未知パラメータが入る場合,及び無限頻度型の場合を含めたが,そこまでの拡張は難しかった.今後の課題としたい. [II]では,[I]でも用いられた「閾値推定」で本質的になるジャンプ判別のための閾値に対して,ある意味で最適な閾値の設定法を提案した.ここでは「最適」の意味を,積分ボラティリティの閾値推定量のバイアスが最小になるものと定義し,最適閾値の数値的な探索法を提案している,この提案手法は,シミュレーションにおいてその有用性が確認され,先行研究に比べ,推定パフォーマンスの点で優れていることが実証された.しかし,「バイアス最小化」にあたって,目的関数をある種の「近似」バイアスを用いている点で,理論的な正当性は確立されておらず,更なる研究が求められる.
|