Research Abstract |
本年度は,ジャンプ拡散過程の擬似情報量規準(連続観測尤度の離散観測近似)の理論を,金融保険における応用に合わせたモデルクラスに対して拡張するための考察を行った.これまではエルゴード的なモデルのみを対象としてきたが,実用上は,非エルゴード的モデルを扱う場合も多い.そこで,最初のステップとして,実務上の課題を理解するために,保険リスク過程(非エルゴード的モデル)における統計的推測に関する事前調査を行った.その調査・研究過程の副産物として,ある種の破産リスクに対する統計推測法を提案することができた.この間の研究に際し,モデリングと理論の再考察の必要性から,予定より大幅な遅延があったため,後に研究期間の延長を余儀なくされた.次に,非エルゴード的拡散過程に対する離散観測推定の理論構築を行った.非エルゴード的モデルの場合,推定量の収束率が変則的となるため,様々なケースにクラスを分類して考察を行う必要があった.本研究では,正再帰的,零再帰的なクラス,及びそれらの補集合である非再帰的クラスに分け,それぞれの代表的な例に対する離散観測によるパラメータ推定と,その収束率を明らかにした.これらの結果は,より広範囲なモデル選択のための擬似情報量規準を構成する際に有用な結果である.最後に,ジャンプ型モデルに対する擬似情報量規準について,いくつかの候補を挙げ考察を試みた.有限活動型のジャンプ過程に対しては,連続観測尤度の近似を用いることで,先行研究で行ったジャンプ部分のみのモデル選択規準から,モデル全体の選択規準へと拡張できることが分かった.無限ジャンプモデルについては,23年6月の海外出張とその時の議論等によって,応用上必要な無限ジャンプモデル設定の枠組みを確定することができ,次年度の研究につながる結果を得ることができた.
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