2011 Fiscal Year Annual Research Report
非線形方程式の解法による行列の対角化法に関する研究
Project/Area Number |
21740086
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
近藤 弘一 同志社大学, 理工学部, 准教授 (30314397)
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Keywords | 応用数学 / 数理工学 / アルゴリズム / 線形数値計算 / 非線形解析 / 固有値分解 / 特異値分解 / ニュートン法 |
Research Abstract |
本研究課題では,固有値分解および特異値分解を非線形方程式の求解問題に置き換え,これをニュートン型反復法により解くことで,既存のアルゴリズムとは異なる新たな数値的特性をもったアルゴリズムを開発することが目的である.固有値分解および特異値分解の固有ベクトルおよび特異ベクトルはノルムの任意性をもつ.通常はノルムを1とする制約条件を加え,ベクトルを単位超球面上に制約する場合が多い.本課題では超平面上への制約を考える.ノルムの大きさは任意であるから超平面の法線ベクトルも任意に選ぶことができるため,これを制御パラメータとして利用する.この法線ベクトルを既得の固有ベクトルから生成される部分空間の直交補空間より選定する.これにより,すべての固有ベクトルおよび特異ベクトルを求めるアルゴリズムを定式化した.定式化したアルゴリズムを超平面制約法と名付けた.加えて,これらのアルゴリズムに関して基礎的な理論証明を与えた.ニュートン法で現れるヤコビ行列の正則性,極限近傍での局所2次収束性,法線ベクトルの選定によりすべての固有および特異ベクトルを得る求解性を示した.これらの定理により提案アルゴリズムの有用性が担保される.また,ニュートン法は反復を繰り返し解の近似精度を向上させる.そのため,最初の反復計算は計算時間の浪費につながる.これがニュートン法の唯一の欠点である.そこで既存のソルバと組み合わせたハイブリッドアルゴリズムを提案し,数値実験によりその実用性を示した.さらには基礎理論の発展のため,ニュートン法の離散力学系としての性質を調べた.ニュートン法の漸化式からなる力学系は初期値およびパラメータによりその挙動は大きく変化する.パラメータによらない一般解の表現を開発しその挙動の解析方法を示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題はおおむね研究計画通りに遂行されている.固有値分解および特異値分解の両方に関するアルゴリズムの定式化に成功し,局所収束性に関する理論的な証明,および数値実験により実用上の有用性を示しことに成功している.研究目標の達成には残すところあと1段階のみであり,その基礎的な調査はほぼ終了している.本研究課題の最終年度においてはそれらを理論的および実証的にまとめあげる計画である.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題として残された課題は提案アルゴリズムの誤差評価である.Kantorovichの定理をもとにした丸め誤差項付きニュートン法に関する準局所収束定理を示す計画である.また,多倍長演算ライブラリを用いた適応型アルゴリズムを応用として提案する計画である.これらを遂行するための基礎的な調査はほぼ終了しており,本研究課題の最終年度内において遂行可能である.
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Research Products
(5 results)