2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21740090
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
伊藤 健一 University of Tsukuba, 大学院・数理物質科学研究科, 助教 (90512509)
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Keywords | 数理物理 / 関数方程式論 / 超局所解析学 / リーマン多様体 / シュレーディンガー方程式 |
Research Abstract |
前年度実施計画の前半部分である双曲型閉測地線を持つ多様体および外部問題の場合の特異性の伝播の研究については,詳細な研究の結果,解析を行うために必要な評価式が十分な形では得られないことが分かった.そのためこの方向への研究よりも,実数ベクトル空間に非ユークリッド計量を与えた場合の散乱理論に重点を置いて研究を進め,一定の成果が得られた.これは前年度実施計画の後半部分に関連する成果である.具体的な成果の内容は以下の通りである:数ベクトル空間上のリーマン計量で,原点を中心とする測地球面の第2基本形式がもとのリーマン計量のある定数倍で下から評価されるようなものを考える。このとき,ラプラスにベルトラミ作用素を用いたシュレーディンガー作用素に対して波動作用素の存在し,その完全性が成り立つ,ここで,用いる自由系は測地的伸長作用素にハミルトン-ヤコビ方程式の解による位相の修正を加えたもので,通常用いられるユークリッドラプラシアンとは異なることに注意する.証明はエルフェール-ショストランドの公式を利用したもので,視点そのものは超局所的であるが,擬微分作用素の理論は一切用いていない.先行結果として漸近的ユークリッド多様体上での波動作用素の存在と完全性が知られていたが,本結果はこの先行結果と比べて遠方での計量の振る舞いに対しての仮定が大幅に弱い.したがって広いクラスの多様体上で散乱理論を道具として利用しながら研究を進めていく今後において,本結果はその基礎付けを与える重要な結果と考えられる.また仮定に現れる第2基本形式は曲率と深い関連にあり,本結果は「曲率のみの幾何的な仮定から理論を制御する」という目的により近いものともなっている.
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