2010 Fiscal Year Annual Research Report
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21740090
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
伊藤 健一 筑波大学, 大学院・数理物質科学研究科, 助教 (90512509)
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Keywords | 数理物理 / 関数方程式論 / 超局所解析学 / リーマン多様体 / シュレーディンガー方程式 / 差分方程式 |
Research Abstract |
本年度の研究内容は,シュレーディンガー方程式に対する以下の2つに分けられる. 1.漸近的ユークリッド空間上での散乱理論 この内容は前年度の研究結果の精密化である.前年度ではあらかじめ与えられているユークリッド座標系を用いた仮定の定式化を行っていたが,この定式化から特別な座標への依存性を完全に排除し,幾何的な,座標不変な定式化を導入した.その過程で本来不要であったリーマン計量に対する制限が取り除かれ,仮定を最良な場合にまで弱めることに成功した. 2.グラフ上での連続極限 この項目はさらに次の2つに分けられる: (1)分散型評価 これは今年度研究計画に記載した内容である.一般に離散シュレーディンガー時間推進作用素の分散型評価はグラフスケールに関して一様ではない.これは,単純にグラフスケール0の連続極限を考えるだけでは連続空間上での方程式の解を離散空間上での解で必ずしもよく近似出来ないことを意味する.しかし今年度の研究により、あるクラスのグラフ上では十分多くの関数に対して分散型評価が一様となることが示された.この一様評価により,例えば,非線形方程式の離散近似等が可能となる.ここで扱われているグラフのクラスには正方格子,三角格子,六角格子,カゴメ格子などが含まれ,他研究者による正方格子上での先行研究の一般化となっている. (2)閾値共鳴 一次元の離散シュレーディンガー作用素に対し,閾値の周りでのレゾルベントの漸近展開表示を得ることに成功した.さらにその応用として,連続空間上でのシュレーディンガー作用素の0-共鳴とその離散近似との関係を調べた.その結果,連続空間上でのシュレーディンガー作用素が0-共鳴を持つことと,0-共鳴を持つ離散作用素の近似列が存在することは同値である,という結果が得られた.
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