2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21740090
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
伊藤 健一 筑波大学, 数理物質系, 助教 (90512509)
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Keywords | 数理物理 / 関数方程式論 / リーマン多様体 / スペクトル幾何 / シュレーディンガー方程式 / 差分方程式 |
Research Abstract |
1.広がるエンドを持つ多様体上での埋め込まれた固有値の非存在 前年度の漸近的ユークリッド空間上での散乱理論の研究に関連して,埋め込まれた固有値の非存在に関する結果を得た.前年度のモデルに比べて,多様体に対する条件を自然な形で弱めることができ,漸近的ユークリッド空間および漸近的双曲空間のそれぞれにおける先行研究を統合・拡張しながら,証明も簡略化することができた.これまでの先行研究ではエンドの存在とその上でのリーマン計量の形状を予め仮定して,議論が進めることが多かったが,今回はそれらを「適当な条件を満たす関数の存在」で置き換えることが一つの鍵となっている.これにより本来不要であった仮定が省かれ,また幾何学的な本質がよりシャープに浮き出る形となった.仮定のうちで最も本質的な部分は多様体遠方における非有界凸関数の存在である.凸関数の存在がエンドの拡大を保証し,そこから従う体積増大率をポテンシャル項と同様に扱うことで,漸近的ユークリッド空間と漸近的双曲空間を統一的に扱うことに成功している.また一意接続性定理によりエンドの遠方のみを見ればよく,多様体のその他の部分にはほとんど仮定が無いことも特徴の一つである.凸関数は幾何学的位相不変量と深いつながりがあり,この結果から,今後,非コンパクト多様体のスペクトルの性質と不変量の間をつなぐ寄与ができるのではないかと期待している. 2.多次元離散ラプラシアンのレゾルベントの閾値周りでの漸近展開 予備的な計算を行い,今後の基礎となる一定の結果が得られた.まだ公表の予定はないが,さらなる精密化と応用が期待できる重要な足掛かりである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
漸近的ユークリッド空間と漸近的双曲空間を同時に扱う手法が得られており,またレゾルベントの展開についても重要な予備的結果が得られている.これらは交付申請書の研究計画にも言及されている内容であり,ゆえに研究は順調に進展していると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
研究成果の内容の核心部分が既に得られているので,なるべく早く公表できる形にまとめられるよう,重点を置き変えて課題を進めてゆく.
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