Research Abstract |
偏微分方程式論において,フーリエマルチプライヤー作用素の有界性が重要な役割を果たすことはよく知られている.実際,熱方程式,波動方程式などの基本的な方程式から,非線形偏微分方程式まで,現在の偏微分方程式論の研究において,フーリエマルチプライヤーは必要不可欠な道具である. 昨年度に引き続き,今年度も多重線形作用素の有界性について研究を行った.多重線形のフーリエマルチプライヤー作用素の有界性に関する結果として,Coifman-Meyerの定理は基本的である.しかし,彼らの結果を線形の立場から眺めた場合,有界性を保証するためにマルチプライヤーに対して要求する滑らかさの条件が強すぎる.この滑らかさの条件を弱めようというのが,研究のテーマである.昨年度までに,ルベーグ空間の指数が1より大きい場合に,Hormander型の定理を得ることができていた. 本年度は,宮地晶彦教授(東京女子大学)との共同研究において,双線形の場合にはすべてのルベーグ空間の指数の下で,双線形フーリエマルチプライヤー作用素が有界になるための最小の滑らかさの条件をソボレフ空間の意味で決定することに成功した.指数が1より小さい場合には,ルベーグ空間をハーディー空間に置き換えるわけだが,双線形の場合には1つのアトムに対する一様な評価を得るだけでは不十分である.これは,線形の場合とは大きく異なる点である.そして,この困難を乗り越えるため,双線形作用素にアトムを作用させた関数を分離して評価する L. Grafakos - N. Kalton (2001) の考え方を,非常に少ない滑らかさの条件の下で適切に修正した.
|