2010 Fiscal Year Annual Research Report
時間遅れをもつ方程式の解の漸近的性質とスペクトル解析
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21740103
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
松永 秀章 大阪府立大学, 大学院・工学研究科, 准教授 (40332960)
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Keywords | 時間遅れ / 積分微分方程式 / 差分方程式 / 漸近安定性 / Volterra差分方程式 / 形式的随伴方程式 / 相空間 / 解作用素 |
Research Abstract |
本年度は主に連続的な時間遅れをもつ2次元線形積分微分方程式系について取り組み、特性根解析を用いて、零解の漸近安定性に対する時間遅れの影響を部分的に解明した。離散的な時間遅れと連続的な時間遅れを統一して表現した、スチルチェス積分型の線形微分方程式に対する特性根解析は今後の課題である。また、岡山理科大学の村上悟教授との共同研究により、無限遅れをもつ関数微分方程式や関数差分方程式に対するformal adjoint theoryが無限遅れをもつ積分方程式に対しても同様に理論展開できる見通しが立ったので、早急に取りまとめる予定である。その他の本年度の研究成果は以下の通りである: (1)時間遅れをもつ2次元線形差分方程式系の零解が漸近安定であるための具体的な必要十分条件を導出し、対角成分の項に含まれる時間遅れの影響を解明した。 (2)対角成分の項に連続的な時間遅れをもつ2次元線形積分微分方程式系の零解が漸近安定であるための具体的なパラメータ領域を与えた。特に、ある条件の下で時間遅れのパラメータを変化させると、stability switchesが生じることも明らかにした。 (3)無限遅れをもつVolterra差分方程式系の相空間における中心-不安定部分空間上での具体的な射影表現を確立し、解の漸近公式を導出した。これにより、絶対値が1の特性根から生じる漸近周期解を具体的かつ簡単に計算できるようになった。
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