2009 Fiscal Year Annual Research Report
種々の幾何学的発展方程式により記述される曲線および曲面のダイナミクス
Project/Area Number |
21740110
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
岡部 真也 Iwate University, 人文社会科学部, 准教授 (70435973)
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Keywords | 函数方程式論 / 変分法 |
Research Abstract |
平均曲率流方程式やポアンカレ予想の解決に至る解析において注目されたRicci flowなどに代表されるように、幾何学的発展方程式は盛んに研究されてきた。しかし、個々の問題の複雑さから、その幾何学的発展方程式によって記述されるダイナミクスまで解明した例は稀である。本研究の目的は以下で述べる3つの主題に注目し、それぞれの問題において曲線または曲面のダイナミクスを解明することである: 【主題A】ノイズを考慮した平均曲率流方程式に支配される界面のダイナミクス 【主題B】Shortening-Straightening流(S-S流)に支配される曲線のダイナミクス 【主題C】一様な圧力をうはる弾性閉曲線のダイナミクス 本年度は主題Aと主題Bについて研究を実施した。以下、各主題ごとに研究業績の概要を述べる: 【主題A】この問題は次のような変分問題として定式化される:「正定数Tと平面閉曲線Г_0とГ_1を与える。Г_0からГ_1へ時刻Tの間に変形する閉曲線族の中で、曲率と変形速度を時空上で2乗積分して定義される汎関数を最小化せよ。」この問題は、時間変数を含んだ変分問題という特徴を有し、得られる偏微分方程式は発展方程式としては一般に解くことができない型に分類されるという難点をもつ。従って、この問題に対する解析は数学的に意義深い。本年度は「ある特殊な状況での臨界点の存在」という結果を幾つかの研究集会にて講演するとともに、現在投稿中である。 【主題B】S-S流とは、曲線γの長さ汎関数と、γの曲率の2乗積分の和で定義される汎関数に対する最急降下方程式である。本主題の目的は、無限の長さをもつ曲線に対してS-S流を構成し、そのダイナミクスを解明することである。この問題は「無限エネルギーに対する勾配流の構成」という難点を有し、数学的に意義深い。本年度は、長さ無限の場合への拡張を視野にいれた、長さ有限の場合の解析を主に行った。その中で適切な境界条件を決定するに至り、長さ無限の場合の時間大域的可解性を示す際に有用となるエネルギー評価も得ることができた。
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