Research Abstract |
本研究では,気体力学から導かれる非線形偏微分方程式に対する数学解析を主な目的とし,特に非線形移流項付き消散型波動方程式や,その基本となる粘性保存則に現れる非線形波の安定性解析を目標に研究を進めてきた。その研究目的のもと本年度に得られた成果について報告する。 研究者はこれまで非線形の形状に着目し,より一般的な非線形項を持つ方程式の安定性について議論してきた。その結果,移流項付き消散型波動方程式に対して安定性の議論を展開し,凸性とsub-characteristic条件と呼ばれる安定性を議論するために必要不可欠な条件の緩和について解析を行い,成果を上げるに至った。そこで,本年度は更なる一般化に挑み,より一般性の強い結果を得ることに成功したので報告する。具体的には,空間1次元半空間における非線形移流項付き消散型波動方程式の定常波の漸近安定性について解析を行い,anti-derivative methodを用いることで方程式を再定式化し,重み付きエネルギー法を適用することで,凸性の仮定を全く必要とせず,緩和されたsub-characteristic条件のみで安定性を導いている。以上の結果は,物理的背景を考察しても大変意味のある結果といえ,更なる今後の研究の発展が大きく期待できる。 また,上記の研究成果を携え,学会等での研究発表も積極的に行った。本年度の研究発表回数は,海外発表2回,招待講演4回を含む計9回である。研究集会の場では毎回活発な意見交換がなされ,今後の研究の方針を定める上での貴重な意見も頂くことができた。
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