2010 Fiscal Year Annual Research Report
気体力学に現れる非線形偏微分方程式の安定性解析と非線形構造
Project/Area Number |
21740111
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
上田 好寛 東北大学, 大学院・理学研究科, 助教 (50534856)
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Keywords | 安定性解析 / 漸近安定性 / 消散構造 / 双曲型方程式 / 可微分性損失 / 重み付きエネルギー法 |
Research Abstract |
本研究では,気体力学から導かれる非線形偏微分方程式に対する数学解析を主な目的としている。本年度は特に,前年度からの研究課題として非線形移流項付き消散型波動方程式を題材とした一般的な非線形項を持つ方程式の安定性についての解析と,新たな問題提起として可微分性の損失を引き起こすEuler-Maxwell方程式の安定性解析を行った。 Euler-Maxwell方程式とはプラズマ現象を記述する方程式であり,この方程式の安定性について解析することは物理背景を考慮しても大変意味のある研究である。また数学的には,本方程式は通常の対称双曲型の方程式系と比べると可微分性を損失しており,解の存在を示すには工夫が必要である。そこで,エネルギーの定義に着目し,時間重み付きのエネルギー法により如何に消散構造を導出するかに重点を置くことで解の存在と漸近安定性を得ることに成功した。 更には,Euler-Maxwell方程式に現れる可微分性の損失は,梁の振動を記述するTimoshenko方程式系にも現れることが知られており,本性質が方程式のどのような効果により導かれるかを考察するのは非常に重要な研究対象である。よって今後の研究課題として,より一般的な対称双曲型に対する安定性理論の構築を目指す。 本年度は上記の研究成果を携えて,学会等での研究発表も積極的に行った。本年度の研究発表回数は,海外発表4回,招待講演7回を含む計10回である。また,国内外を問わず研究集会の場では毎回活発な意見交換がなされ,今後の研究の方針を定める上での貴重な意見も頂くことができた。
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