Research Abstract |
本研究では,気体力学から導かれる非線形偏微分方程式に対する数学解析を主な目的としている。本年度は,前年度に引き続き可微分性の損失を引き起こすような緩和項を持つ双曲型方程式系の安定性解析について研究を行った。 始めに,時間重み付きエネルギー法を用い,Euler-Maxwell方程式の更なる解析を行うことで減衰構造の解明に取り組んだ。その結果,詳細な減衰構造が明らかになり,可微分性損失の仕組みが把握できた。そこで,その経験を生かすことで,Euler-Maxwell方程式や梁の振動を記述するTimoshenko方程式を包括するような一般の方程式系に関する安定性を議論し,その特徴付けに着手した。その結果得られたのが,可微分性損失の引き金となる非対称な緩和項をもつ対称双曲型方程式系に対する安定性理論である。内容としては,可微分性損失を引き起こすメカニズムを詳細に記述するとともに,安定性を構築するための条件を導入している。更には,ある特別な条件下では可微分性損失が起こらないことについても言及している。この安定性理論は,これまでに知られていた物理モデルに関する多くの結果を包括するものであり,更には今後様々な物理モデルにも適用されることが期待される。 本年度は上記の研究成果を携えて,学会等での研究発表も積極的に行った。本年度の研究発表回数は,海外発表3回,招待講演11回を含む計14回である。また,国内外を問わず研究集会の場では毎回活発な意見交換がなされ,今後の研究の方針を定める上での貴重な意見も頂くことができた。
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