2009 Fiscal Year Annual Research Report
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21740113
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
奈良 光紀 東京大学, 大学院・数理科学研究科, 特任助教 (90512161)
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Keywords | 関数方程式論 |
Research Abstract |
反応拡散型偏微分方程式で記述されるある種の非線形現象においては、相異なる複数の状態を分ける相境界としての「界面」が生じ、これが複雑な空間パターンの形成に大きな役割を演じる。界面はしばしば、「進行波」という形で媒質中を移動し、系の状態変化を周囲に伝達する役割を担う。こうした界面の形成プロセスとその後の発展過程を明らかにすることが本研究の目的である。平成21年度は主として、双安定型非線形項をもつ反応拡散方程式に現れる界面ダイナミクス、特にAllen-Cahn方程式に現れる平面波の漸近安定性について研究した。これまでの研究で、遠方で減衰する初期擾乱や概周期性を持つ初期擾乱に対する平面波の漸近安定性は既に証明されていた。平成21年度の研究では、平面的なフロント解の時間漸近挙動を詳細に解析し、平均曲率流方程式による界面運動の近似定理を証明した。特に、時刻無限大まで近似が成立する点が既存の研究結果との大きな違いである。このような近似定理を証明するためには、解の導関数に関する減衰評価が必要となる。無限次元力学系の概念を導入して、解の時間漸近挙動について各種の評価式を導き、優解劣解を精密に構成することで証明を行った。更に、得られた近似定理を用いて、空間的にエルゴート的な初期擾乱に対する平面波の漸近安定性を証明した。これらの研究成果を論文「Stability of planar waves in the Allen-Cahn equation」(Communications in Partial Differential Equations誌掲載)および「Large time behavior of disturbed planar fronts in the Allen-Cahn equation」(投稿中)にまとめ、その内容を日本数学会秋季総合分科会などで発表した。また、これらの研究が双安定型反応拡散方程式および減衰型波動方程式の特異極限問題と予想以上に深く関連することが判明し、その特異極限問題への応用研究を行った。
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Research Products
(2 results)