2011 Fiscal Year Annual Research Report
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21740117
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
楯 辰哉 名古屋大学, 大学院・多元数理科学研究科, 准教授 (00317299)
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Keywords | 幾何学的漸近解析 / 凸多面体 / リーマン和 / トーリック多様体 / ランダム行列理論 / 量子酔歩 |
Research Abstract |
本研究課題の目的の一つである、格子凸多面体上のリーマン和の漸近挙動の研究については昨年度解明し学術論文として出版した。しかしこの研究目的においては更に問題が残されている。つまり漸近展開公式の各項に現れる微分作用素の各面上での積分の幾何学的な意味の追求である。私の漸近公式はBerline-Vergneの結果の漸近解析版とでも言うべき物であり、実際、展開式の各項に現れる微分作用素はBerline-Vergne作用素(無限次数微分作用素)の各斉次項と一致することを上述の論文において示した。Berline-Vergne作用素は凸多面体に対応するトーリック多様体のトポロジーと関連する、幾何学的に重要なものであった。そしてリーマン和自身も、ある種のテープリッツ型作用素のトレースとして現れるという幾何学的に重要なものであった。従って私の得た漸近公式の各項のトーリック幾何学的な位置づけを理解することは重要な問題であるが、現時点では解決には至っていない。また、ランダム行列理論の諸結果の、一般のコンパクトリー群の増大列への拡張についての問題も本研究課題の目的の一つであった。当初、特殊ユニタリ群に対するHiai-Petzの大偏差原理型の定理に対して、Wey1の分母(差積)のサブレベルセットの体積の増大度を調べることにより、その別証明をつけることを最初の目標とした。これについて、Wey1の分母のサブレベルセットの体積の増大度はある程度調べているが、これを目的の固有値分布の性質へ応用できるまで精密に整理出来ていない。本年度も残念ながらこの部分の決定的な解決には至っていない。また、離散幾何解析学との接点を模索することも本課題の目的の一つであったが、本年度は、砂田利一教授との共同研究で、離散幾何解析学の分野の量子酔歩に関する良い結果を得て、学術論文として出版することが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全般的に論文の本数は少ないものの、重要な研究を行っている。特に昨年度に出版した、凸多面体上のリーマン和の漸近挙動についての論文は重要な物だと考えている。本年度はこれについては更なる進展は見られていない。また、ランダム行列理論に関する問題についても、様々な計算結果は得られているものの、決定的な結果が得られておらず、その意味では多歩遅れている。しかし本年度は先にも記載した通り、離散幾何解析学における量子酔歩の問題について重要な業績をあげることが出来たことを考えると全体的には研究進度は順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
凸多面体上のリーマン和の漸近展開公式の各項のトーリック幾何学的な意味の解明へ向けて努力する。具体的には、この第四項を具体的に計算し、その計算結果を解析することで、幾何学的な意味付けを考察する。また、ランダム行列理論に関する問題については、今まで得られている計算結果を再び検討し、整理することにより、出版可能な程度まで完成度をあげることを目標とする。 本年度は離散幾何解析学における量子酔歩と呼ばれる新しい分野との関連を模索し、この分野で業績をあげることができた。この分野は今後さらに重要度をまし発展するものと考えられる。こちらの方向性も重要であり、興味深い物であるため、引き続き精力的に研究したい。 本年度は、事情のため特に夏期に各種の研究集会へめ参加が不可能な状態であった。そのため情報収集が多少遅れてしまい、大変残念であった。しかし来年度は通常通り情報収集を行うことが出来るものと考えている。引き続き、離散幾何解析学や非可換幾何学と、凸多面体上の漸近解析学との接点を見いだせるよう努力する。
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Research Products
(6 results)