2009 Fiscal Year Annual Research Report
モノドロミ保存変形と積分表示可能な新しい特殊関数についての相補的研究
Project/Area Number |
21740118
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
眞野 智行 University of the Ryukyus, 理学部, 助教 (60378594)
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Keywords | モノドロミ / 積分表示 / 楕円曲線 |
Research Abstract |
本研先課題に関する丙容について、今年度は以下のような研究成果を得た:1.Wirtinger積分について.Wiritnger積分とはテータ関数の冪積を楕円曲線上で積分することにより定義される関数であり、本研究課題の最も主要な研究対象である。この関数は上半平面上で解析的に定義されるものであるが、それがモジュラー曲線上で代数的に書けることの厳密な証明を与えた。この結果によりモジュラー曲線上のフックス型微分方程式が構成できるが、その確定特異点における特性指数およびスペクトル型を記述することにも成功した。この成果により接続行列等の大域的挙動が計算可能でありながら非リジッドであるフックス型方程式の新しい例が構成できることが期待され当該分野にインパクトを与えるものと思われる。この成果に直接つながる今後の研究の課題としては、いくつかの例に対して接続行列の具体的計算・非リジッドでありながら接続行列が計算可能であることの根拠の理論的解明等がある。なお本年度の成果の一部分については学術論文の出版および学会・研究会での講演により発表を行った。残りは今後の進展を含めた形で発表の予定である。2.q差分パンルヴェ方程式の大域的性質について.q差分第6パンルヴェ方程式の境界点の周りでの解の漸近展開を構成し、2つの境界点での解の接続関係を記述した。このうち後半の成果が本研究課題と関連する。すなわち微分の場合にはPicard解と呼ばれる特殊解の存在が知られておりこれは楕円曲線上で自然に記述される解であり、楕円曲線上のモノドロミ保存変形の研究の動機となった。このPicard解のq差分類似については未だ知られておらず本研究の成果がその探求に利用できると期待される。その意味でこの成果は今後の研究の基礎を与えるものである。3.高階フックス型方程式の合流操作についての新たな現象の記述(川向洋之氏との共同研究).高階フックス型方程式のモノドロミ保存変形の退化操作を考えることが元々の動機である。高階フックス型方程式の特異点を合流させた際、変形パラメータが増えるという現象がある。これは2階では見られなかったものでその根拠が不明であったが、それに理論的説明を与えた。この観点からは微分だけでなく差分も含めて扱うことの必要性が明らかになった。しかしまだ具体例についての計算が未完成でありこれを完成させた後、論文を執筆の予定である。
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