2010 Fiscal Year Annual Research Report
モノドロミ保存変形と積分表示可能な新しい特殊関数についての相補的研究
Project/Area Number |
21740118
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
眞野 智行 琉球大学, 理学部, 助教 (60378594)
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Keywords | モノドロミ / 積分表示 / 楕円曲線 |
Research Abstract |
今年度は以下のような成果を得た:1.q-差分パンルヴェ方程式の解の大域挙動に関する解析的研究について この課題は前年度から継続する研究内容である。q-差分第6パンルヴェ方程式についての接続保存変形による記述を利用して、境界点における解の漸近表示の構成と、2つの境界点における解の局所表示の間の接続関係式を導出する。前年度得られた結果に、より一般的な状況で適用可能な結果を加えたうえで論文としてまとめ、国際的専門学術誌への掲載により発表を行った。この研究は非線形差分系の解析的研究として数少ない結果の一つであり、ここで得られた知見は本研究課題の今後の展開において重要な示唆を含むものと考えられる。2.高階フックス型方程式の合流操作について(川向洋之氏との共同研究) 前年度得られた一般的結果を利用して3階のフックス型方程式の場合に非線形差分系の具体的記述を試みたが、一応結果を出すことが出来、いくつかの学会・研究会で口頭発表を行ったものの、記述がまだまだ複雑でありこのままでは一般化が困難な状況である。この困難を打開するためのいくつかの試案はあるものの、うまくいくかどうかは何とも言えない状況で研究遂行はやや停滞しており他の研究課題の遂行を優先している。しかし高階フックス型方程式のモノドロミ保存変形は以下の研究内容とも関連しているのでいずれもう一度真剣に取り組む必要が出てくるだろうと思われる。3.レベル3のWirtinger積分から得られるフックス型方程式の具体形の導出 一般のWirtinger積分からレベルNのモジュラー曲線上のフックス型方程式が構成できることは前年度の研究により証明されたが、非自明で一番簡単なレベル3の場合にこれが具体的にどのようなフックス型方程式を与えるかは非常に興味が持たれるところである。今年度はこの計算を試みたが、一応結果は出たもののあまり満足いく形ではなく少し方針を変えてもう一度計算を試みるつもりである。来年度も引き続き取り組みたい。4.多重Riemann-Wirtinger積分の定式化について Riemann-Wirtinger積分は本研究課題の最も重要な研究対象の一つである。これは1次元複素トーラス上の定積分として定式化されているが、今年度新たに1次元複素トーラスの複数個の直積の上の多重積分で定義される新しい特殊関数の定式化の可能性について研究した。多重積分では複数通りの定式化が可能であることが分かり、それぞれが非自明な応用を期待できる対象である。より具体的な性質の解明については今後取り組む予定であり、非常に大きな進展が期待できると思われる。
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