2011 Fiscal Year Annual Research Report
モノドロミ保存変形と積分表示可能な新しい特殊関数についての相補的研究
Project/Area Number |
21740118
|
Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
眞野 智行 琉球大学, 理学部, 助教 (60378594)
|
Keywords | モノドロミ / 積分表示 / 楕円曲線 |
Research Abstract |
本年度は次のような研究成果を得た:1.通常2重点を持つ有理曲線上のモノドロミ保存変形の定式化.これは昨年度から継続するテーマである.複素トーラス上のモノドロミ保存変形について,複素トーラスを退化させたときにそのモノドロミ保存変形がどのように記述されるかについての研究であり,得られた成果をまとめて論文として出版した. 2.Riemann-Wirtinger積分のツイストホモロジーとツイストコホモロジー群を用いた定式化(渡辺文彦氏との共同研究).これも前年度から引き続いてのテーマである.Riemann-Wirtinger積分のツイストホモロジーおよびコホモロジー群を用いた定式化についてはほぼ完成していたが,今年度新たに楕円曲線上の共形場理論の相関関数を記述するKZB方程式の解の積分表示との関係を明らかにした.KZB方程式は数理物理学等様々な分野と関わる重要な対象であり,本研究課題における対象との関係を明確にしたことは多数の研究者が興味を持つきっかけになりうるのではないかと考えられる.この内容について論文を執筆した.3.レベルNのWirtinger積分.今年度以前からの継続でレベルNのWirtinger積分はレベルNの主合同部分群に対するモジュラー曲線上のフックス型微分方程式をみたし,その確定特異点における特性指数の状況の記述についての研究を行っていたが,この研究で得られた成果について論文を執筆した.4.モノドロミ保存変形のシュレジンガー変換とパデ近似.これは今年度の新しい研究テーマであり最も進展があったものである.まずパデ近似を用いて2階フックス型微分方程式のシュレジンガー変換が構成できることを示し,その帰結としてガルニエ系の超幾何型解および一般解の行列式表示を得た.この成果について論文を執筆した.さらにこの方法を任意の階数かつ任意個数の不確定特異点をもつ線形微分方程式の?合に拡張する研究を行った.このような広い場合に適用できる行列式表示の研究はこれまでなされていないと思われ,非常に興味深い.実際,行列式表示を導出する過程で行列式についての恒等式に関する新しい予想が得られる.これについてはまだ証明できていないが,研究の新しい展開として非常に興味深い.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究目的として挙げた課題のうち、モノドロミ保存変形とパデ近似の関係については予想以上の進展があった。しかしレベル3のWirtinger積分の具体形の導出と多重Riemann-Wirtinger積分についての研究は手が回らずあまり進展が見られなかった。このような理由で以上のような評価をした。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は新しく進展しつつある研究について重点的に取り組みたい.特にモノドロミ保存変形とパデ近似の拡張についての研究は,新たな可積分系との関連や楕円曲線状への拡張等,より大きな広がりが期待できる. 一方で当初の研究計画で最も大きなテーマとなっていたWirtinger積分とその一般化についても取り組む.かねてからの問題であったレベル3の場合のフックス型微分方程式の具体形の導出と,多重Riemann-Wirtinger積分の定式化がまず取り組むべき問題である.これらの課題は有理曲線上の線形微分方程式に還元できる部分を含んでおり,興味深い応用をもたらすことが期待できる.
|