2010 Fiscal Year Annual Research Report
ベクトル値の状態分布関数で記述される自由境界問題の研究
Project/Area Number |
21740120
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
白川 健 千葉大学, 教育学部, 准教授 (50349809)
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Keywords | 自由境界問題 / 固体・液体相転移 / 多角形構造 / 自由境界の幾何学的形状 / 安定性 / 薄膜磁性体 / 退化性を伴うエネルギー / Г-収束 |
Research Abstract |
本年度では,ベクトル値の状態分布関数で記述される自由境界問題の分野における「固体・液体相転移」と「薄膜磁性体」の2つのテーマを扱い,そのそれぞれにおいて以下の研究成果を報告した. (A)固体・液体相転移における研究成果 前年度からの研究活動の発展として,熱方程式とAllen-Cahn型方程式をカップリングさせた放物型変分不等式のシステムを扱い,このシステムによって再現される自由境界に関して以下2つの成果を得た. (a1)多角形構造を基本とする異方性を伴うケースにおいて,外的刺激に対して安定性を持つ自由境界の幾何学的形状を明らかにした. (a2)円を多角形近似する事によって異方的状況から等方的状況への極限問題を導出し,極限の自由境界の形状に対する幾何学的観点からの考察を与えた.等方的状況では既に安定な自由境界の形状に関する報告例があるが,今回の考察によって実際には先行の報告よりも多くの安定な自由境界が存在することがわかった. (B)薄膜磁性体における研究成果 本年度より,新たに薄膜磁性体の支配エネルギーが再現する自由境界の考察に着手した.このエネルギーの主要変数は,磁化の強さと方向を表す3次元のベクトル値関数である.ここでは退化性を伴うエネルギーに焦点を当て,膜幅をゼロとする時の極限問題に関して以下2つの成果を得た. (b1)研究の第一段階として,エネルギーの定義域が膜幅に関して不動であるケースを扱った.結論として,このケースでは「Г収束」の一般論が適用可能であることが明らかになり,更にこの理論を適用する事によって現象の直観的理解に適った考察結果が得られた. (b2)研究の第二段階として,エネルギーの定義域が膜幅に関して可変であるケースを扱った.このケースでは上記の「Г収束」の一般論の適用は無理であったが,エネルギー固有の性質を活用する事によって,より発展的な枠組みでも現象の本質を捉えた結論を導くことが出来た.
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