2011 Fiscal Year Annual Research Report
ベクトル値の状態分布関数で記述される自由境界問題の研究
Project/Area Number |
21740120
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
白川 健 千葉大学, 教育学部, 准教授 (50349809)
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Keywords | 自由境界問題 / 幾何学的構造 / 薄膜磁性体 / 退化型の材料係数 / 固体・液体相転移 / Allen-Cahn型方程式 / 最適制御問題 / 数値実験 |
Research Abstract |
本年度では前年度から継続の「薄膜磁性体」に現れる自由境界問題に関する研究課題から活動をスタートさせたが,前半期の早い時期に課題遂行の見通しをつけられたため,後半期には「外力による自由境界の最適制御」といった発展的な課題を扱う新しい段階へ研究を進展させることができた.平成23年度で得られた研究成果は大きく以下の3点にまとめられる. (A)薄膜磁性体に現れる自由境界問題に対する研究成果 薄膜磁性体を対象とする研究課題に関しては,前年度より退化型の材料係数が組み込まれた数学モデルを扱ってきており,膜幅ゼロの極限を取ればオリジナルの3次元モデルを2次元モデルへ単純化できることがわかっている.これを踏まえ本年度では,2次元モデルの解が再現する自由境界の幾何学的構造の解明に取り組んだ.その結果,薄膜磁性体の数学モデルの解構造は材料係数の分布に大きく左右され,特に自由境界の幾何構造と材料係数が退化する部分との間には直接的な関連性があることを明らかにした。 (B)固体.液体相転移を対象とする最適制御問題の考察 固体・液体相転移に現れる自由境界に関しては,前年度までに等方的構造・異方的構造の双方において様々な幾何構造の報告例の蓄積がある.従って本年度では,等方的な自由境界を再現するAllen-Cahn型方程式に対する最適制御問題を新たに考案し,外力の調節によって自由境界の幾何構造の形成を制御可能かどうかについて考察を与えた.更に,最適制御を求めるための数値計算アルゴリズムも構築し,制御問題における自由境界の形成プロセスを数値実験的立場から明らかにした。 研究活動全般を振り返ると本研究では「固体・液体相転移」と「薄膜磁性体」における自由境界問題に対して期待以上の研究成果が得られたため,上記以外の自由境界問題についても同様の考察が可能であるかどうかが,今後の大きな興味の対象となっている.
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