2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21740124
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
緒方 芳子 The University of Tokyo, 大学院・数理科学研究科, 准教授 (80507955)
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Keywords | 大偏差原理 / 量子スピン系 / 平均場モデル |
Research Abstract |
本年度は量子スピン系における物理量の確率分布についての大偏差原理を中心に研究をおこなった。古典系における大偏差原理については多くのことがわかっているが、量子系におけるそれは理解されていることが非常に少ない。熱平衡系における大偏差原理の理解は非平衡系における大数の法則の理解に役立つと考えられる。しかし、量子スピン系の熱平衡状態で大偏差原理が示されているのは現在のところ一次元系にとどまっている。主な困難は量子系を表す代数が非可換なことにある。一次元系は時間発展についてよい性質を満たすことが知られており、この性質ゆえにこれまでの解析が可能であった。本年度の研究では、まず、一次元量子スピン系の大偏差原理についての別証明を与えた。前に自身が行った証明では、RuelletransferOperatorという手法を用いた。しかしこれは原理的に一次元系にしか適用できない手法であるという問題があった。これに対して依然困難があるものの、本年度得た新しい証明は高次元に拡張しうる可能性を持っている。この証明の高次元への拡張については引き続き研究を行っていく予定である。第二に、本年度は平均場モデルと呼ばれる模型について、大偏差原理を示した。一次元でこれまで我々が解析してきたモデルは相転移を起こさないのに対して、このモデルは相転移をおこすことから、物理的に新しい種類の結果であるといえる。
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Research Products
(2 results)