2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21740124
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
緒方 芳子 東京大学, 数理(科)学研究科(研究院), 准教授 (80507955)
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Keywords | 量子統計力学 / 非平衡統計力学 / 量子スピン系 / 仮説検定 |
Research Abstract |
本研究では作用素環を用いた、熱平衡、非平衡統計力学の研究、とくにマクロな量子系の確率論的な解析を行った。マクロな量子系は、作用素環によって与えられるため、これは非可換確率論に対応する。研究内容は大きく二つに分けることができる。一つ目は、量子スピン系における巨視的物理量の性質、特にその確率分布の研究である。特に、高次元量子スピン系における大偏差原理や「量子系における同時確率分布」の大偏差的振る舞いについて理解することを目標とした。二つ目は時間発展するマクロな系における非平衡性、特に時間反転対称性の破れについて解析を行うことである。 具体的に行った研究は以下の通りである。(i)量子スピン系におけるマクロな物理量の可換な行列による近似 (ii)非平衡過程における時間反転対称性の破れの度合いについての解析。(i)は上で挙げた量子スピン系における巨視的物理量の研究において得られたものである。量子系における同時確率分布を考える上で、巨視的物理量の非可換性がどの程度のものであるのかを見極めるのは重要であるが、巨視的物理量の組がいつも可換な行列で近似できるというのを示したのが(i)の結果である。 (ii)は上で挙げた時間反転対称性の破れについての解析で、今まで知られていた大偏差的関数が、時間反転対称性の破れの度合いを表すものであることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
量子スピン系、また漸近的可換性をもつ系について、巨視的物理量についての知見が深まった。また、時間判定対称性の破れについては、当初目標としていた結果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の課題としては、1.漸近的可換性を持つ系における巨視的物理量の可換な物理量による近似、2.非可換中心極限定理からの、量子系における揺らぎの研究、を行う。
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