2010 Fiscal Year Annual Research Report
複素Henon写像族のパラメータ空間の力学系的研究
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21740125
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
石井 豊 九州大学, 数理学研究院, 准教授 (20304727)
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Keywords | Henon写像 / Julia集合 / iterated monodromy group |
Research Abstract |
今年度は主にHenon写像に対するiterated monodromy groupの研究を行った。そもそもiterated monodromy groupは自己被覆写像に対してNekrashevychによって導入された対象であり、もしその力学系が拡大的なときは、この群作用によって力学系の極限集合が記述可能であることを主張している。一方、Henon写像は微分同相写像でありしかも良くて双曲的であるため、Nekrashevychの構成は直ちには適用できない。そこで、研究代表者はまず彼の理論を必ずしも弧状連結でない場合に拡張してそれをdisjoint Hubbard treeに対して適用し、次にHubbard treeのpinchingの情報も加えた場合に更に理論を拡張した。具体的には、各連結成分に対応して出てくるpreimage tree同士をpinchingの情報を用いて同一視をし(これをpreimage forestとよぶ)、この商空間上で各成分の基本群の擬群作用を考える、というものである。この作用から記号空間における同一視が定義でき、その商空間がHenon写像のJulia集合と同型になることが証明できた。この応用として、Henon写像に対してRicard Olivaが幾つかの例に対してのみ構成したようなautomataが組織的に構成可能になる。このautomataの例の具体的な計算は、Gottingen大学のLaurent BartholdiとDzmitry Dudkoと共同で行った。また、John Smillieとの共同研究で行ったhomotopy shadowingのテクニックを用いて、ソレノイドからJulia集合への半共役写像の明示的な構成をいくつかの具体的なHenon写像に対して行った。これはBedfordとSmillieによって得られていた定理の具体例を与えている。
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