2011 Fiscal Year Annual Research Report
複素Henon写像族のパラメータ空間の力学系的研究
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21740125
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
石井 豊 九州大学, 大学院・数理学研究院, 准教授 (20304727)
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Keywords | Henon写像 / Julia集合 / Hubbard tree / IMG |
Research Abstract |
今年度はまず第一に、Henon写像のHubbard treeからJulia集合の位相的モデルをどのように構成するかについて考察した。以前の論文において、非連結Hubbard treeモデルからまず商を取ってその射影極限を考えていた(Quotient-Limit Construction)が、それがJulia集合と同型になることの証明には間違いが見付かった。そこで、非連結Hubbard treeモデルの射影極限を取ってその商を考える(Limit-Quotient Construction)と、それがJulia集合と同型になることが証明できた。しかしその後、京都大学の浅岡正幸氏によって、実はQuotient-Limit Constructionたよって得られたモデルもJulia集合と同型になることが証明された。この結果によって、2つの異なる構成法が実は同一の位相的モデルを与えることが判明した。更に浅岡氏と共に、2つのHubbard treeの間のシフト同値性と位相共役同値性とのあいだの関係について考察した。今のところ未だこれらの間の完全な対応はついていないが、Hubbard treeに対して位相不変量を定義するという意義が見出せるであろう。 続いてHenon写像族におけるシフト・ローカスの基本群を記号力学系の自己同型群に表現する問題について考察した。-2次多項式の複素力学系のDouady-Hubbard理論においては、マンデルブロー集合の補集合にカノニカルな極座標を導入でき、それがパラメータ空間の理解に非常に強力であることが知られているが、Henon写像族に対しては類似の対象物は知られていない。シフト・ローカスの基本群の表現は、Henon写像族に対する「極座標」の代替物を与えてくれるものと期待されており、今年度はこの記号力学系への表現とiterated monodromy group-(IMG)との関連に関する幾つかの予想を提出した。これらの仕事はGottingen大学のLaurentBartholdi氏とDzmitry Dudko氏との共同研究である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目標の第一ステップはHenon写像に対してiterated monodromy groupやオートマトンを構成し、その極限空間がJulia集合と同型になることを示すことにあったが、それはほぼ実行できたのでおおむね順調と言えるであろう。一方で、これらの手法をパラメータ空間の解析に応用することは未だ成功していないため、当初の計画以上には進展していない。
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Strategy for Future Research Activity |
まずHubbard treeの不変量の研究については、2つのHubbard treeの間の位相共役性がそれらのホモロジーの間のシフト同値性を導くか、という問題を考察する。そして次にこのシフト同値写像から位相不変量を取り出す。もしホモロジーだけでは情報が荒い場合は、基本群レベルのシフト同値写像を考察する必要も出てくるであろう。またHenon写像族のシフト・ローカスの研究については、記号力学系への表現とiterated monodromy group (IMG)との関連に関する予想を数値実験で調べたり、1変数の場合のアナロジーを考察することでアプローチの道を模索したい。
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