2010 Fiscal Year Annual Research Report
移流項を伴うロトカ・ボルテラ系の空間パターン解に対する研究
Project/Area Number |
21740129
|
Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
久藤 衡介 電気通信大学, 大学院・情報理工学研究科, 准教授 (40386602)
|
Keywords | 反応拡散系 / 移流 / 定常パターン / 楕円型偏微分方程式 / 極限系 / 分岐 / 数理モデル / 境界条件 |
Research Abstract |
平成22年度においては、移流項を伴うロトカ・ボルテラ系の空間定常パターンを解析した。とりわけ、餌が同じで生存競争をしている2種の生物の個体数変化を記述するロトカ・ボルテラ系において、競争相手が多い場所から少ない場所へ移流する効果を増大させたときに、定常解の空間分布がどのように変化するか考察した。数理モデルの見地では、上記の移流が生存競争に有利か不利かを数学的に説明することが主眼となる。本研究課題の平成21年度においては、ディレクレ境界条件の下で、移流の強さを無限大とした極限系を導出していたが、平成22年度においては、その極限系の解集合が形成する大域分岐構造が得られた。この極限系の解構造によって、生存競争をする2種の生物が上記の移流をする種としない種に分かれた場合、移流しない生物種の個体数密度は競争相手の移流の強さに反比例することが分かった。一方で、移流しない種は、競争相手の移流が強くなるほど、より低い増殖率であっても生存可能であることも明らかとなった。これらの2つの結果は、生存競争における移流効果は競争相手の数を減らすという点では有利だが、競争相手がより低い増殖率でも生存可能にする(耐性を高める)不利な側面も併せもつことを示唆している。なお、極限系はノイマン境界条件でも考察した。ディレクレ境界条件で得られた定常解の成す分岐枝は、ノイマン境界条件では定数解に自明化する点が難所であり、この定数解からの非定数解の分岐を解析することが課題となる。この課題に対して、平成22年度においては、非定数解の局所的な分岐を証明するとともに数値的な分岐枝の追跡を行った。定常解の集合が形成する分岐構造の大域的な解析は平成23年度に継続される。
|
Research Products
(3 results)