2011 Fiscal Year Annual Research Report
移流項を伴うロトカ・ボルテラ系の空間パターン解に対する研究
Project/Area Number |
21740129
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
久藤 衡介 電気通信大学, 情報理工学研究科, 准教授 (40386602)
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Keywords | 移流 / 反応拡散 / 楕円型偏微分方程式 / 分岐 / 極限系 / 境界条件 / 現象の数理 / ロトカ・ボルテラ系 |
Research Abstract |
代表的な移流項のひとつである「交差拡散(cross-diffusion)」を伴うロトカ・ボルテラ競争系の研究に従事し、交差拡散が共存定常解に及ばす効果を解析した。具体的には、有界領域において縄張り争いをする2種類の生物に対する個体群密度について、定常状態を記述する楕円型偏微分方程式を取り上げた。定常状態を記述する楕円型偏微分方程式系に対して、1999年にLouとNiは、ノイマン境界条件下においては、交差拡散を無限大とした際の解の漸近挙動は「両種の棲み分けが起こる」か「交差拡散効果のない生物種が絶滅する」の2種類であることを数学的に示している。 平成23年度の本研究によって、ディレクレ境界条件の下では、同じ楕円型方程式系の解は、交差拡散を無限大にすると、必ず「交差拡散効果のない生物種が絶滅する」ことが証明できた。この結果は、生物種の生存競争においては、ディレクレ境界条件が、共存の可能性を排除することを数学的に示唆している。さらに、生物種の絶滅レートは交差拡散の逆数であることも分かった。具体的な方法として、絶滅種と交差拡散の積と生き残る種をそれぞれ新たな未知関数とした系で、交差拡散を無限大にした際に、未知関数の極限が満たす「極限系」の解析を行った。その結果、極限系の解集合の成す有界な曲線の抽出に成功した。ノイマン境界条件の下では、絶滅を特徴付ける極限系の解析は進んでいないことから、本研究によって、(境界条件が異なるものの)関連する系の解構造が解明できたことは、移流項を伴うロトカ・ボルテラ系の今後の研究に寄与すると考えられる。 なお、上記の研究成果は、平成23年度日本数学会秋季総合分科会(函数方程式論)や京都駅前セミナーにおいて口頭発表を行った。その成果は、国際的な学術雑誌に投稿中である。
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