2009 Fiscal Year Annual Research Report
モスアイ効果を利用した中間赤外線天文観測用シリコンレンズの開発
Project/Area Number |
21740131
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
酒向 重行 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教 (90533563)
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Keywords | 赤外線天文学 / 中間赤外線 / 反射防止 / モスアイ / シリコン / RIE / レンズ / TAO |
Research Abstract |
東京大学アタカマ望遠鏡(TAO)や次世代赤外線天文衛星SPICAなど高地や宇宙空間からの高感度の赤外線観測を行う計画では、長波長中間赤外線(λ=25-40μm)に高い効率を持つレンズが必要とされている。本研究の目的はシリコンをサブストレートとし、その表面にモスアイ反射防止体を形成することで高効率のレンズを実現することである。モスアイ反射防止体とは従来の多層膜干渉法を用いず、物質表面に波長スケールのピッチで錐構造を形成し、境界の屈折率差を連続的に接続することで反射を防止する手法である。この方法は反射防止膜に用いる透過材料が乏しい波長帯で有効である。平成21年度は電磁波解析シミュレーションを行い、低反射率を広帯域に実現するモスアイ形状の導出を行った。結果、シリコン上にピッチ5μmでアスペクト比が4の円錐突起を60。隣接配置したモスアイ構造を形成した場合、長波長中間赤外線において0.5%以下の低い反射率が得られることがわかった。また、長波長中間赤外線にて低吸収損失のシリコンの選定も行った。複数種のシリコンの吸収率を測定した結果、ドープ量の少ない高抵抗シリコン(>10kΩ cm)が長波長中間赤外線に吸収が少ないことがわかった。これを用いれば厚さ5mmのレンズでも、吸収損失を1%以下に抑えることができる。以上をもとに、設計したモスアイ構造を半導体製造技術を用いて高抵抗シリコン製の平板上(片面)に形成する試験を行った。反応性イオンエッチング(RIE)工程の諸条件を探り、製造プロセスを行った結果、ピッチ5μmの円錐アレイ構造を形成することに成功した。製作したモスアイシリコン平板の透過率を測定した結果、波長15-45μmで1面あたりの反射率がほぼゼロであることを意味する透過率=0.7を得た。
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