2011 Fiscal Year Annual Research Report
惑星形成過程の観測的検証法:原始惑星系円盤のダスト進化とガス散逸機構
Project/Area Number |
21740137
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
野村 英子 京都大学, 理学研究科, 助教 (20397821)
|
Keywords | 理論天文学 / 星・惑星系形成 / 原始惑星系円盤 / ガス散逸 / ダスト合体成長 / 星間化学 |
Research Abstract |
本研究では、近年の太陽系外惑星の発見と原始惑星系円盤の分光観測の進展を背景に、(1)円盤内ダスト・ガスの包括的かつ自己完結的な進化モデルの構築と(2)円盤ガス分子の化学的・分光学的特性やダスト粒子の光学特性を利用したモデルの観測的検証により、惑星形成過程及び系外惑星の多様性の起源解明を目指す。H23年度は特に、円盤ガスの化学的特徴・観測的性質について重点的に研究を行った。まず、(A)中心星からの紫外線やX線照射が原始惑星系円盤の化学構造に及ぼす影響、特に円盤内ガスの電離度および磁気回転不安定性への影響を調べた。これにより、円盤上層部は紫外線・X線の影響により磁気回転不安定となるのに対し、円盤赤道面付近は、オーム拡散・ホール効果・双極性拡散の影響により、磁気回転不安定性は安定化されることを示した。さらにHCO+,C180ミリ波輝線の観測により、円盤赤道面付近の電離度が測定可能であることを示唆した。また、(B)円盤風が円盤化学構造に及ぼす影響を調べ、円盤風のダイナミカルタイムが百万年を越えると、H20,0H,HCO+,HCNなどの特に赤外線輝線に影響を及ぼすことを示した。さらに、(C)13CO,HCN,CNサブミリ波輝線を用い、円盤表層部の温度構造が測定可能であり、特に若い星団内において近傍の大質量星に照射された円盤の光蒸発過程の検証に有効であることを示した。他にも、(D)円盤内のダスト合体成長・沈殿計算に基づき、高空隙率ダストの衝突圧縮過程がサブミリ波・ミリ波連続光の波長依存性の観測により検証可能であることを示し、(E)太陽系内カイパーベルト天体の観測結果と小天体合体成長の解析解に基づき、円盤外縁部における小天体形成における衝突破壊の重要性を示した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H23年度は、ALMA初期運用のプロポーザル用に円盤化学構造に関する研究を比較的重点的に行ったため、円盤内ダスト・ガスの包括的かつ自己完結的な進化モデルの構築にやや遅れが生じ、逆にモデルの観測的検証に関しては、当初の計画以上に進展した。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究課題では今後は特に、進捗状況がやや遅れ気味である、円盤内ダスト・ガスの包括的かつ自己完結的な進化モデルの構築に重点を置き、研究を推進する。また、モデルの観測的検証に関しては特に、すばる望遠鏡、スピッツアー、ハーシェル宇宙望遠鏡、およびALMAの観測データとの比較によりモデルを検証し、本研究課題のまとめとする。
|