2009 Fiscal Year Annual Research Report
銀河・銀河団の多波長データに基づいた遠方宇宙の探究
Project/Area Number |
21740139
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
北山 哲 Toho University, 理学部, 准教授 (00339201)
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Keywords | 宇宙論 / 銀河団 / X線 / ミリ波サブミリ波 / 銀河形成 |
Research Abstract |
平成21年度は、将来の観測計画による銀河団の観測可能性を定量的に評価するための研究を主に進めた。特に日本が平成25年度に打ち上げを予定している次世代X線衛星ASTRO-Hに対し、X線観測の専門家との連携のもと、検出器の応答関数を考慮した詳細なシミュレーションを用いて、銀河団に付随する高温ガスの乱流速度や電子温度がどの程度の精度で測定できるかを調べた。その結果、近傍銀河団に対しては、乱流速度の空間分布を誤差10%程度以内ではじめて測定できる見込みであることが明らかになった。一方、遠方銀河団に対しては、乱流速度の平均値を赤方偏移0.5程度まで、電子温度の平均値を赤方偏移2程度まで測定可能であることを明らかにした。これらはいずれも、銀河団を用いた宇宙論研究に大きな意義をもつ成果であると考えられるので、ASTRO-Hサイエンスミーティング(宇宙科学研究所)、日本物理学会(岡山大学)などにおいて口頭発表を行った。このようなX線領域における観測と、ミリ波サブミリ波領域における将来計画とをいかに効果的に組み合わせるかの検討を引き続き進めている。また、X線観測衛星のキャリブレーション誤差が、宇宙論パラメータ決定に及ぼす系統的不定性についての研究も合わせて行い、その結果を現在論文にまとめている段階である。さらに、原始銀河形成に関して、宇宙初期の再電離時に自然に形成されると考えられる高密度星団が、今日観測される球状星団の諸性質を良く説明できることを、輻射流体シミュレーションによって示すことに成功したので、その成果を英国王立天文学会誌に発表した。
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