2011 Fiscal Year Annual Research Report
宇宙望遠鏡の赤外データを用いた、可視域では見えない赤外線星の研究
Project/Area Number |
21740142
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
板 由房 東北大学, 大学院・理学研究科, 助教 (30392814)
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Keywords | あかり衛星 / 大マゼラン雲 / 小マゼラン雲 / 赤外線星 / 質量放出 / 近赤外 / 中間赤外 / データベース |
Research Abstract |
日本の赤外線観測衛星「あかり」及び、NASAが打ち上げたSpitzer宇宙望遠鏡が、近~中間赤外線の波長域で大小マゼラン雲を大規模に撮像観測した。これらの衛星が取得した貴重な観測データを用いて、大小マゼラン雲中の赤色巨星の質最放出率を見積もり、質量放出率と星の脈動の関係性を調べる研究を行った。この研究で用いた赤外線星の脈動データは、10年間もの長期にわたる我々独自の観測によって世界で初めて得られたものである。 脈動の観測データから、周期、振幅、脈動モード等のパラメータを計算した。次に、上述の宇宙望遠鏡によるデータを用いて、質量放出率を見積もった。これまでは、脈動による力学的エネルギーによって物質が星表面から放出されるため、脈動と質量放出の間には強い関係性があると広く考えられてきた。しかし、今回取得した新しいデータを用いて、脈動パラメータと質量放出率の関係性を調べたところ、上記のいずれの脈動パラメータも質量放出率とは弱い関係性しか無い、または無関係である事がわかった。また、脈動による星の光度変化の様子をフーリエの手法を用いて定量化し、光度曲線の形を定量的に評価した上で質量放出量との関連性を調べた所、これも無関係である事がわかった。 これらの事柄は少なくとも大規模に質量放出を行っている赤外線星においては、脈動は質量放出量の重要な決定要因ではない、という事を示しており、これまで広く受け入れられてきた通説に疑問を投げかける結果を得た。
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Research Products
(6 results)