2009 Fiscal Year Annual Research Report
活動銀河核から吹き出すアウトフローガスの幾何学的構造の解明
Project/Area Number |
21740150
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
三澤 透 The Institute of Physical and Chemical Research, 牧島宇宙放射線研究室, 基礎科学特別研究員 (60513447)
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Keywords | クェーサー吸収線 / 活動銀河核 / 降着円盤 / アウトフローガス |
Research Abstract |
クェーサーとは遠方銀河のおよそ1割でみられる極めて明るい中心核のことである。銀河中心に存在する巨大ブラックホールに近傍のガスが降着することによる重力エネルギーの解放が、そのエネルギー源であると考えられている。もともと角運動量を持っていたガスは降着しながら回転軸に沿って降着円盤を形成するが、ガスの供給を継続させるためには溜まった角運動量を何らかの方法で取り除く必要がある。最も有力なシナリオは降着円盤からのアウトフローガスによるものであり、降着円盤から輻射圧や磁気遠心力などによって加速されたガスが角運動量を維持したまま系外に放出されるというものである。このアウトフローガスは、星形成を抑制したり重元素汚染を起こしたりするため、近傍の環境にも大きな影響を与える。一般に、放出ガスの研究にはクェーサーのスペクトル上にみられる吸収線(クェーサー吸収線)が用いられる。輝線観測と異なり、吸収線の場合、背景光源が何であれ、その視線上に存在するクェーサー近傍のガスを他者の影響を受けることなく効率良く検出することができるからである。従来、アウトフローガスの研究にはBroad Absorption Lineとよばれる線幅が2,000km/sを越える非常に強い吸収線が用いられてきた。しかし吸収線の線幅は観測者が降着円盤を見込む角度に依存すると考えられる。そこで本研究では、Very Large Telescopeのアーカイブデータをもとに「線幅にとらわれない」吸収線のサンプルを構築した。モニター観測によりその時間変動性についても調べた。その結果、線幅の大きい吸収線が明らかな時間変動を示すのに対し、線幅の小さい吸収線(Narrow Absorption Line)は数年程度の時間スケールでは極めて安定していることが明らかになった。更にすばる望遠鏡を用いた偏光分光観測も行い、散乱物質が時間変動をもたらしている可能性を排除することにも成功した。いずれもアウトフローガスの幾何学的構造を解明するうえで重要な結果である。
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