2009 Fiscal Year Annual Research Report
広域サーベイデータを用いた過去最大の重力レンズクエーサー探索
Project/Area Number |
21740151
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
稲田 直久 The Institute of Physical and Chemical Research, 牧島宇宙放射線研究室, 基礎科学特別研究員 (20462658)
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Keywords | 重力レンズ / 観測的宇宙論 / 暗黒エネルギー / クエーサー |
Research Abstract |
可視光広域サーベイ観測計画「スローン・ディジタル・スカイ・サーベイ(SDSS)」のデータを用いた重力レンズクエーサーの探索を行った。この「重力レンズ(重力レンズ現象)」とはアインシュタインの一般相対性理論から帰着されるもので、背景からの天体の光がちょうどその手前にある天体の重力によって歪められ、見かけ上複数の像をもって観測されるという天体現象である。この重力レンズ現象、特に、重力レンズされたクエーサーが発生する頻度は、宇宙の全質量の大半を占めると考えられている未知のエネルギーである「暗黒エネルギー」の存在量に強く依存することが知られており、その精密な測定のための過去最大規模の統計的な重力レンズクエーサーのカタログを作成すべく、ハワイ大学2.2m望遠鏡などを用いた観測を実施した。その結果、SDSSJ0819+5356と名付けられた天体をはじめとする5つの新しい重力レンズクエーサーを発見し、悪天候等の影響により全てのSDSSのデータを用いた重力レンズクエーサーカタログを完成させることにはわずかに至らなかったが、現段階でもすでに過去最大規模となる統計的カタログを構築することに成功している。その過去最大の統計的カタログに基づいて暗黒エネルギーの存在量を測定したところ、他の観測(宇宙マイクロ波背景放射等の観測)とは独立に、重力レンズクエーサーの頻度という観点からも、現在標準とされている宇宙論パラメータを支持する結果が得られた。また、平成22年度前半期の観測時間を多数獲得し、全てのSDSSのデータを用いた重力レンズクエーサーカタログの完成、およびその応用研究のための基盤を築いている。さらに本年度においては、上記の研究に加え、重力レンズ現象を受けた"銀河"を発見し、また、重力レンズされたクエーサー像の光路差を利用した重力レンズクエーサーの新たな発見方法の開発を試みた。
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