2011 Fiscal Year Annual Research Report
彗星の赤外線観測と採集塵の実験室分析に基づく原始太陽系星雲物質循環の解明
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21740153
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大坪 貴文 東北大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (50377925)
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Keywords | 光学赤外線天文学 / 太陽系 / 彗星 / ケイ酸塩鉱物 / 結晶質 / すばる望遠鏡 / 赤外線衛星あかり |
Research Abstract |
彗星は原始太陽系星雲中の微惑星そのものといってもよく、その塵と氷は太陽系形成初期の情報を比較的よく保持していると予想される。そのため彗星塵中の結晶質鉱物と彗星分子氷は原始太陽系星雲中の温度環境を知るためにも重要な手がかりの一つである。 本年度は、これまでにすばる望遠鏡と赤外線衛星「あかり」で近・中間赤外線観測をおこなった彗星(オールト雲彗星・木星族彗星)のデータの整理と整約を行い、放射モデルを用いた解析の総括的な結果をまとめた。結晶質鉱物に関しては、昨年度、世界中の望遠鏡による観測キャンペーンの一部としてすばる望遠鏡でも観測する機会を得たハートレー彗星(103P/Hartley)に関して、探査機の観測結果と比較することができる中間赤外線スペクトルを得ることができたが、その結果を欧米の研究者との共同研究としてまとめ、今年度論文が受理された。また、ホームズ彗星のバースト後の分光観測結果に関しても、結晶質ケイ酸塩の放出量の時間的変化を追うことができ、国際研究会で公表することができた。一方分子氷に関しては、「あかり」での観測結果を基に18の彗星での分子組成比を導出し、まとめた結果を論文で公表した。特に彗星氷の二酸化炭素の観測結果としては、「あかり」の結果は過去最大の観測サンプル数となるものである。 今年度前半は震災のため研究の進展が滞ったが、年度全体を通してみれば、彗星の氷と結晶質鉱物の起源についてこれまでの3年間の総括となるようなデータをまとめるところまでこぎ着けることができた。これらは今後の近・中間赤外線観測を組み合わせた研究の基礎となるものと期待される。
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