2009 Fiscal Year Annual Research Report
宇宙大規模構造の高精度理論テンプレートから探る精密宇宙論の研究
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21740168
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
樽家 篤史 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教 (40334239)
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Keywords | 精密宇宙論 / 宇宙大規模構造 / ダークエネルギー / 理論テンプレート / 原始非ガウス性 / パワースペクトル / バイスペクトル |
Research Abstract |
本計画は、銀河サーベイを用いた精密宇宙論研究において中心的役割を果たすパワースペクトル・バイスペクトルに焦点をあて、精密観測から宇宙論的情報を引き出す上で不可欠な高精度の理論テンプレートを、解析的な手法をベースに構築することを目標にしている。平成21年度の繰り越し申請分では、実用的な側面からの研究として、銀河バイアスの影響を取り入れた精密理論テンプレートの構築を進めた。 構造形成の種である原始密度ゆらぎがガウス統計からずれた場合、ある種のゆらぎの生成機構では、銀河バイアスに強いスケール依存性が現れることが近年になって指摘されている。本研究ではより一般的視点から、原始密度ゆらぎの統計性が多成分の非ガウス場で表される場合に、銀河バイアスへの影響を理論的にモデル化し、N体シミュレーションを用いてその妥当性についての検証を行った。その結果、大スケールにおけるN体ハローのパワースペクトルは、理論モデルできわめてよく再現できることがわかった。さらに、一成分非ガウス場からなる原始非ガウス性に対し、N体ハローのバイスペクトルについても定量的に求め、通常のガウス初期条件では現れない、銀河バイアスの強いスケール依存性を見い出し、その傾向は理論モデルでよく記述できることをつきとめた。本研究で得られた理論モデルを足がかりにすれば、原始密度ゆらぎの非ガウス性が多成分由来か否かを観測から区別・検証することが可能である。原始密度ゆらぎの生成機構を解明する方法論の一部として、本研究の成果は重要な基礎と位置づけられる。
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