2011 Fiscal Year Annual Research Report
宇宙大規模構造の高精度理論テンプレートから探る精密宇宙論の研究
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21740168
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
樽家 篤史 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教 (40334239)
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Keywords | 精密宇宙論 / 宇宙大規模構造 / 精密理論テンプレート / 赤方偏移歪み / ダークエネルギー / パワースペクトル |
Research Abstract |
本研究課題は、将来の大規模銀河サーベイを用いた精密宇宙論研究において中心的役割を果たすパワースペクトル・バイスペクトルに焦点をあて、精密観測から宇宙論的情報を引き出す上で不可欠な高精度の理論テンプレートを、解析的な手法をベースに構築することを目標にしている。最終年度である平成23年度は、銀河バイアスの影響を取り入れた理論テンプレート作りを進めるとともに、理論テンプレートの高速計算を可能とする計算スキームの開発に取り組んだ。 銀河バイアスに関しては、前年度までの研究成果である赤方偏移歪みの理論テンプレートに、スケール依存性を考慮した線形バイアスを取り入れ、N体シミュレーションによる検証を行った。その結果、従来のモデルに比べ、本研究の理論モデルはN体シミュレーションのふるまいをより正確に再現しただけでなく、赤方偏移歪みに付随して現れる銀河バイアス特有のクラスタリングの増大効果を説明することにも成功し、現モデルが実用段階として十分な状態にあることがわかった。 一方、理論テンプレートの高速化に関しては、Γ-(ガンマ)-展開と呼ばれる非摂動な摂動計算スキームをもとに、具体的な解析計算手法を計算コードに実装、N体シミュレーションとの比較からその計算精度を検証した。さらに、この計算スキームをもとに計算を飛躍的に高速化できる方法論を考案した。その方法とは、予め用意された計算データとの差分を取る事で、補正部分のみを新たに計算するというものであり、Γ-展開にもとづけば必要な計算はたかだか1次元の数値積分にとどまることが示される。このアイデアにもとづき、現在、高速計算コードの開発を進めており、完成すれば並列計算なしに数秒でパワースペクトルの計算が可能になる。
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