2010 Fiscal Year Annual Research Report
ミニ衛星による突発ガンマ線観測の感度向上のための結晶シンチレータ検出器
Project/Area Number |
21740170
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中澤 知洋 東京大学, 大学院・理学系研究科, 講師 (50342621)
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Keywords | 衛星搭載 / ガンマ線検出 / シンチレータ / 複合材 / 光学観測 |
Research Abstract |
本研究では、検出効率に優れるが、重くて割れやすいBGO結晶シンチレータを用いたガンマ線全天モニターを小型衛星に容易に搭載できるシステムを目指している。このために、熱膨張率をBGOのそれにできるだけ近づけた複合素材を用いた支持構造の開発(平成21年度の成果)、大型でかさばる光電子増倍管でなくコンパクトなシリコン半導体にもとづくアバランシェフォトダイオード(APD)を用いた読み出し、そしてこれをFPGAやマイコンなどの小型の回路で処理する技術を開発している。平成22年度の研究により、以下の成果を得た。まず構造について、鍵となるBGOを複合材に接着/固定をする面の反射材の性能を徹底的に再評価し、溶媒を変更し塗装技術を向上することで、BGOのシンチレータの性能を全く劣化させることなく、従来比で2倍の強度を達成し、振動/衝撃に対する耐性を大きく向上した。次に読み出しについて、電磁ノイズ対策の観点からAPDに200um厚のアルミ製シールドを被せてパッケージ化する構造を開発し、試作して十分な耐ノイズ性能が得られることを確認した。この構造は検出器デザインの柔軟性を高める、極めて実用的な改良である。FPGA/マイコンを用いた情報処理部については、今回は既存の8ch FADCボードに立脚し、アナログ的な波形成形と組み合わせて波高値を得る、簡素なシステムを構築した。このシステムはアナログ信号をデジタル化し、宇宙標準のシリアル通信SpaceWire規格で転送できる。最大16chの読み出しを可能としており、BGOとAPDを組み合わせた合計9chまでの読み出しを実施した。また、5chのシステムを用いて、BGO間の同時計数などを評価し、想定通りの性能を得ていることを確認した。本研究により、コンパクトなシステムで、大型のBGOシンチレータを固定し、読み出すという概念が実証された。今後、小型衛星への搭載を考えるにあたって、有効な検出器デザインを提示した。
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