2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21740173
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
杉本 茂樹 The University of Tokyo, 数物連携宇宙研究機構, 特任教授 (80362408)
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Keywords | ハドロン / 弦理論 / 量子色力学 / ソリトン / 核力 / Dブレイン |
Research Abstract |
ハドロンの物理や量子色力学を弦理論を使って解析する研究を行った。より具体的には、弦理論を用いて、(1)バリオンの性質の研究、(2)核力の研究、(3)ゲージ群が0(N)やUSp(N)である量子色力学の研究、(4)メソンのスペクトルの研究などを行った。 2004-2005年ごろの研究により、弦理論を用いてQCDを実現すると、メソンは開弦で表され、その有効理論が曲がった5次元時空におけるゲージ理論となることや、バリオンがこの5次元ゲージ理論におけるソリトンとして実現されることが分かった。これに基づき、(1)では、バリオンを5次元ゲージ理論のソリトンとして表されることを用いて、ソリトンを量子化することによって、陽子や中性子やその他のバリオンが得られることを示し、さらに磁気モーメント、荷電半径、形状因子などを計算した。その結果、知られているバリオンの性質やいろいろな物理量の実験値が期待以上にうまく再現されることが分かった。(2)では、ソリトンが2つある場合の解をADHM構成法を用いて構成し、2つの核子が非常に接近した場合の核力を計算した。その結果、実験で期待されているように近距離で斥力芯があることが確認された。(3)ゲージ群が0(N)やUSp(N)の場合の量子色力学において、対称性の力学的な破れの仕方、バリオンやフラックスチューブの安定性が、ゲージ群がSU(N)である通常の量子色力学とはずいぶん異なることが知られている。我々はこの系を弦理論の枠内で構成する方法を考案し、これらの性質が場の理論で期待されている通りに再現されることを示した。(4)では、弦のスペクトルを調べ、スピンが2以上のメソンを含むやや重いメソンのスペクトルが定性的にかなりうまく再現されることを示した。これについては現在、論文を準備中である。
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