2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21740181
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高橋 徹 Kyoto University, 基礎物理学研究所, 研究員 (70467405)
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Keywords | 格子QCD / カイラル対称性 / ハドロン間相互作用 / ストレンジクォーク / 原子核理論 |
Research Abstract |
世の中の構成要素である、陽子・中性子・中間子など、強い相互作用にしたがう原子核・ハドロンの系は、'より基礎的な理論、量子色力学(QCD)によって支配されていることがわかっている。QCDは簡潔なラグランジアンで記述されるSU(3)非可換ゲージ理論であるが、そのダイナミクスはQCDの持つ強結合性により非常に複雑・多彩なものとなっている。現在においても、QCDのダイナミクスを解くことは容易ではなく、ハドロン物理のQCDからの理解はまだ発展途上といえる。申請者は強力な第一原理計算である、格子QCDモンテカルロ計算を用いて、ハドロン物理を直接QCDの観点から解明することを主眼に研究を行った。主な研究対象はストレンジクォークを含む、負パリティバリオンA粒子である。近年、核子とK中間子の間の非常に強い引力の存在が示唆されており、この引力は、これまで考えられていなかった、新しい物質形態(K中間子物質)を生み出す可能性がある。核子とK中間子の相互作用を知ることは現実には容易ではないが、核子とK中間子の束縛・共鳴状態と見なされているA粒子の性質を調べることにより、核子・K中間子相互作用に重要な示唆を与えることができる。申請者は、格子QCDを用いて、A粒子の内部フレーバー構造を評価した。その結果、基底状態は、フレーバー1重項が支配的であり、励起状態はフレーバー8重項成分が支配的であることをつきとめた。格子QCDによる、粒子のフレーバー構造の評価は、世界で初めての成果である。これちの結果は、国際会議で発表され、査読付き論文誌に掲載された。その他、物質の構造に直接関与する、ハドロン間ポテンシャルの研究を新たに開始し、その成果は日本物理学会で発表されている。
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Research Products
(4 results)