2010 Fiscal Year Annual Research Report
重力理論検証の視点での天文単位の永年変化問題の究明
Project/Area Number |
21740193
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
荒木田 英禎 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 助手 (80413970)
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Keywords | 相対論・重力波 / 位置天文学 / 理論天文学 |
Research Abstract |
太陽系内の高精度位置天文観測データを解析する上で,光の湾曲,重力による時間遅れ、無線リンクの周波数変化といった信号伝播モデルの精密化が必要です。 通常は光のヌル測地線方程式を積分する事で解が求められていますが,この方法では高次の相対論的効果や時空が時間依存する場合,ヌル測地線方程式を解くことは大変難しくなります。しかし最近Le Poncin-Lafitte et al. (2004), Tey ssandier and Le Poncin-Lafitte (2008)がSyngeのWorld functionを元にしたTime transfer functionという新たなアプローチを確立し,ヌル測地線方程式を直接積分する場合と比べ,特に2次以降の高次のポスト・ニュートン/ポスト・ミンコフスキー補正を含む場合の計算量が劇的に軽減される事を示しました.彼らの定式化そのものはメトリックが時間に依存する場合を含めた,一般的な表現が与えられてはいるものの,彼ら自身は実際に時間依存する場合の解を求めた訳ではありません. 我々はTime transfer functionを時間依存する重力場内での光の伝播へ応用し解の導出が可能である事を示しました. 時間依存する時空としてSchwarzschild時空とFLRW宇宙モデルを融合したようなMcVittieモデルを採用し,この時空内を伝播する光・信号の時間遅れを計算し.信号伝播における宇宙論的効果をより正確に評価しする事に成功しました.この結果を天文単位の永年変化へ応用し,宇宙膨張による時間依存する効果は観測された天文単位の時間変化量$d{\rmAU}/dt=15\pm 4$[m/世紀]に比べて約9桁小さい効果である事を示しました.
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