2010 Fiscal Year Annual Research Report
共形不変な有効理論によるブラックホール熱力学の解析
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21740197
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Research Institution | Kushiro National College of Technology |
Principal Investigator |
梅津 裕志 釧路工業高等専門学校, 一般教科, 准教授 (90393420)
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Keywords | ブラックホール / 量子重力 / 共形場理論 / 行列模型 |
Research Abstract |
この研究の主要な目的は、ホーキング輻射やブラックホールエントロピーなどのブラックホールの熱力学的性質を、時空の地平近傍の有効理論などを用いて解析し、時空の微視的構造と重力の量子論的性質を理解することである。平成22年度は、まず流体において現れる音波に対するブラックホールについて研究した。音速よりも早く流れる流体の背景場中では、音波がその内側から外側に伝播できない領域が存在する。この領域は、重力理論におけるブラックホールと同様の性質を示すことが理論的に知られている。特に音波を量子化することにより、ホーキング輻射と同様の現象が起こることが期待されている。量子重力理論の場合はミクロな記述を与える適切な自由度が不明だが、流体系の場合はミクロな理論が既に分かっていることが大きな利点である。我々は流体系のブラックホールに対するエントロピーを定義し、熱力学第1法則、第2法則に対応する法則をミクロな自由度を用いて導出することについて研究した。ブラックホールエントロピーは、時空の地平の内側と外側に存在するモードの間のエンタングルメントエントロピーとして導入することが出来る。一方、熱力学法則をミクロな自由度から導出し、それを重力理論におけるブラックホールの場合に適用することが今後の課題である。 次に、ブラックホールエントロピーの存在から期待される時空の離散的性質を理解するために、非可換時空上の場の理論について研究を行った。これまでに様々なケーラー多様体上の非可換積が導入されているが、我々は非可換時空上の量子場の理論を解析する上でより適切な記述方法について研究した。場の理論において扱い易い非可換積の構成方法についての理解は進んだので、非可換時空に特有の場の理論における量子効果について研究を続けている。
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