2009 Fiscal Year Annual Research Report
弦の場の理論とDブレーンによる初期宇宙・ブラックホールにおける量子重力効果の研究
Project/Area Number |
21740198
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Research Institution | Gunma National College of Technology |
Principal Investigator |
小林 晋平 Gunma National College of Technology, 一般教科(自然科学), 講師 (70513901)
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Keywords | 宇宙物理 / 素粒子論 |
Research Abstract |
アインシュタインの重力理論は、標準宇宙モデルによる宇宙の記述とブラックホールの発見という、2つの大成功を収めた。しかしその成功の一方で、「誕生間もない宇宙や、宇宙の誕生そのものはどうやって調べたらよいのか」、「ブラックホールの内部構造や特異点はどうなっているのか」という、量子力学と相対論を整合的に融合した量子重力理論でなければ解明できない問題があることもわかってきた。この量子重力理論の候補として、現在最も期待されているのが弦理論である。 弦理論では、全ての物質が弦という1次元物体から出来ていると仮定する。単純な仮定だが、実際にこれだけの仮定から、弦が様々に振動することで各種の物質粒子や重力場になることが示される。しかし弦理論は摂動的にしか定義できていないため、非摂動的な弦理論の完成と、弦理論の性質を備えた有効理論による重力系の解析が重要になってくる。 そこで平成21年度に私達は、時空の非可換性を考慮に入れた「宇宙項しかない非可換重力理論」を提唱しこれについて研究した。時空が離散化されて非可換性を持つことは弦理論から導かれる代表的な結果だからである。この研究によって、非可換性の影響で、宇宙項のみの場合でもミンコフスキー時空を始め、様々な時空構造が得られることが証明された。これは、通常のアインシュタイン重力理論ではリッチスカラー項(運動エネルギーを表す項)がないとブラックホール解や宇宙を表す解が得られないことと対照的な結果である。しかも、宇宙がどうやって始まったかを解明する上で「宇宙項が重要な役割を果たす可能性」も示唆しているといえる。 私達は現在、さらにこのモデルに関する研究を進め、弦の場の理論との対応関係や、このモデルからアインシュタイン重力理論を導き、統一的な宇宙進化の理論を得るための研究に発展させている。
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Research Products
(3 results)