2011 Fiscal Year Annual Research Report
超弦理論が宇宙論とブラックホールの量子論に与える示唆
Project/Area Number |
21740216
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
関野 恭弘 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 研究員 (50443594)
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Keywords | 素粒子論 / 宇宙物理 |
Research Abstract |
1.宇宙初期の加速膨張期(インフレーション)において、宇宙背景輻射の温度揺らぎが生成される新しいメカニズムを提案した。これは、通常考えられているスカラー場(インフラトン)の準古典的揺らぎによるメカニズムとは異なり、超弦理論に存在する多数の場の純粋に量子的な効果に基づくものである。宇宙背景輻射の観測から超弦理論のパラメーターを決定する可能性を探った。(羽原由修氏(岡山光量子科学研究所)、川合光氏(京都大学)、二宮正夫氏(岡山光量子科学研究所)との共同研究。) 2.M理論(超弦理論の強結合極限)の非摂動的定式化として提案されているBFSS(Banks-Fischler-Shenker-Susskind)行列模型の相関関数の研究を行った。この理論は、ブラックホールのダイナミクスの解明の上で重要であるが、強結合での振る舞いは複雑であまり理解されていない。以前の研究で、ゲージ/重力対応(行列模型と超弦理論の等価性)に基づく方法により相関関数を求め、特定の演算子の相関関数は冪則(冪は自由場の冪とは異なる分数)に従う事などを発見していたが、今回、モンテカルロ・シミュレーションによる数値的解析により、その結果を高い精度で確認した。(花田政範氏(KEK)、西村淳氏(KEK)、米谷民明氏(放送大学)との共同研究。) 3.前年度から行っている、「超弦理論のランドスケープ」に基づく宇宙論の研究を続けた。超弦理論は、我々の宇宙はより大きい宇宙項を持った宇宙からのバブルの生成によって出来たことを示唆している。バブルの生成で出来た宇宙を記述する非摂動的定式化、「永久インフレーション」の相構造、宇宙背景輻射の揺らぎの特徴、に関する研究を行った。(これまでの研究成果と進行中の研究に関して、国内外の学会、研究会で講演した。)
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Research Products
(12 results)