2009 Fiscal Year Annual Research Report
走査トンネル顕微鏡による半導体中のナノスケール核スピン偏極と検出
Project/Area Number |
21740219
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
橋本 克之 Tohoku University, 大学院・理学研究科, 助教 (30451511)
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Keywords | 走査プローブ顕微鏡 / 半導体物性 / 量子閉じ込 |
Research Abstract |
核スピン偏極をナノスケールで偏極・検出するためには、極低温・強磁場で動作する走査トンネル顕微鏡(STM)及びそれを用いた走査トンネル分光(STS)が必要となる。このシステムを構築するためSTMを希釈冷凍機に挿入することにより、30mKの極低温及び12Tの強磁場中で標準試料の積層グラファイトの一原子層のステップ構造をとらえることに成功した。また、強磁場中でSTSを行い、グラファイト表面に存在する擬二次元電子系のランダウレベルの観測にも成功した。これは、本実験で必要となる極低温・強磁場の環境下でSTM・STS測定が安定に行える事を示している。 また、本実験で用いる試料である吸着原子誘起二次元電子系を作成するため、硫黄分子を含むアルカリ溶液中でInSbのウエハーをへきかいすることで、清浄表面に硫黄分子を吸着させた。この吸着過程時は水溶液の温度を一定に保つ必要があるため、恒温槽内ですべての過程を行った。その後、二次元電子系が実際に誘起されているかどうか確認するため、フォトリソグラフ技術と電子ビーム蒸着機を用いて数個の電極を試料表面に取り付け、電気抵抗測定を行った。その結果、100mKの極低温で磁気抵抗の振動を観測した。これは二次元電子系に特徴的である量子ホール効果を反映したものである可能性があるが、再現性を始めより詳細な実験を今後行う必要がある。硫黄分子を吸着したInSb表面のSTM測定も行ったが、安定なSTM像が得られなかったことから、今後、吸着硫黄分子の量を最適化する必要があると考えられる。
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